ヘルプを求めることで得る知見も大きい
自分のやり方だと絶対に時間通りには終わらないと思っていた仕事が、先輩にやり方を教わっただけで劇的な時短につながった経験が私にもあります。
私は過去、プレゼン資料を作成する専門部署にいました。プロジェクトチームは6~7人いて、複数の人から原稿がパラパラと入稿されます。あるとき、1枚の資料に4人からの修正指示が時間を置いてばらばらにくる、というのが複数枚重なり、それに一人ひとり対応していると、どう考えてもプレゼンの出発時間には間に合わない、という事態になりました。
自分ひとりでの事態収拾は無理だと思った私は、忙しいのに悪いなと思いつつ先輩に助けを求めました。そのとき、先輩が取った行動は、「人」ではなく「修正箇所」に注力するという方法でした。1枚1枚の資料に意識を置き、複数人から指示があった同じ修正は、パチパチとホチキスで留めていきます。こうして修正すべきページを一気に直していきます。修正を指示してきた一人ひとりにチェックしてもらっていては絶対に間に合わないので、チームをまとめているリーダーに修正後のチェックをすべて任せるようにかけあってくれました。その結果、作業が劇的に早く終わり、なんとかプレゼンの時間に間に合わせることができました。
「私は、いつもやっているからというだけの理由で作業手順に何の疑問ももたずにそのまま続けていたんだ」と、はっとしました。いつも、修正指示をした人に原稿を戻すという作業を繰り返してきたため、このような緊急時の突発変則技を思いつかなかったのです。
「プレゼンに、間違いなく確かな資料を間に合うように届ける」という大目的を忘れなければ、今まで惰性でやっていた作業はもっと効率化できるのだ、と気づいた瞬間でした。
最後に、今回の記事をまとめます。
●場所や時間を選ばない働き方が主流になると、個々人の仕事の仕方がブラックボックス化する
●自分のやり方に固執するとイノベーションが生まれにくい
●今が会社の同僚/先輩とリアルにコミュニケーションを取りやすい最後のタイミング。よりよい仕事のやり方を周囲から盗んでいこう
●そのための手段が「ヘルプ貯金」と「ためらいなくヘルプを求めること」
●残業がすべて悪なのではない。必要なら周囲をヘルプしていくことが、のちのち自分の働き方改革につながる
「今どきの若手」に共感する人も、「老害の経営層」に共感する人も、上記ポイントを意識してみると、相手にイライラさせられることもなくなり、仕事をすることがそのまま働き方改革につながりますよ。ぜひ試してみてください。
文/池田千恵 写真/PIXTA
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