あえての「ヘルプ残業」が、時には働き方改革の鍵となる

 「ピア・プレッシャー」という言葉があります。自分の意志とは関係なく他人と同調しなければいけないという心理的圧力のことです。私の年代(40代前半)前後ですと「私は早く仕事が終わったんだけど、周りが忙しそうだからなんとなく帰りづらいな……」と、忙しいフリをして今日する必要がない残業をしたことは一度や二度ではないでしょう。これが「ピア・プレッシャー」です。

 割り切ってサッサと帰ってしまう人を羨ましいと感じる一方、もったいないなとも思います。なぜならば、人のヘルプをすることで、普段見えない周囲の仕事の仕方を垣間見ることができるからです。また、自分が袋小路に入ったときに、自分ひとりで解決しようとせずにヘルプを求めることによって、どう考えても突破口が開けない問題がアッサリと解決できる場合も多いのです。

 目の前の「検索窓」のほうが、隣の先輩や同僚よりも気軽に質問できる相手かもしれません。でも、検索窓に入れるワードとして、何が最適かということを一番よく知っているのは、隣の先輩や同僚かもしれないのです。

 もちろん、残業する必要がないのにあえて残業する必要はありませんが、余裕があって周囲が困っているときはスポット的に手助けをしたり、自分が困っているときにはためらわずヘルプを求めたりすることは、自分のメリットにもつながります。

 今後リモートワークなど、場所や時間を選ばない働き方が主流になっていく可能性が高く、個々人の仕事の進捗度合いを見ることはどんどん減っていきます。だからこそ、今がリアルにコミュニケーションを取りやすい最後のタイミング。このタイミングで周囲の技を盗んでいくことが「じぶん働き方改革」のコツです。

「ヘルプ貯金」で自分の働き方を客観視しよう

 「人は相手のことはよく見えるが自分のことは分からない」、とはよく言ったもの。自分の仕事の流れを客観的に見ることは普段は難しいですが、ヘルプをすると、相手が物理的に作業量が多くてパンクしてしまったのか、それともこのようになる前に本来何らかの手が打てたのか、という視点で、客観的に物事を見られるようになります。

 さらに、「ヘルプは貯金できる」ということも心に留めておくとよいでしょう。普段から周囲が忙しくてもどこ吹く風、の人が本当に困っていても、周囲は「自業自得」としか思ってくれません。本当に困っている人を、自分が余裕のあるときにちょこっと助けるというのを繰り返していると「○○さんはあのとき助けてくれたから、お礼にちょっと助けてあげよう」という気持ちになるのが人情というものです。