松下:養子の事実は中学生のときに偶然知り、そのときはショックでした。でも兄たちと差別されたこともなく、貧乏だけど愛があって最高の環境だった。血がつながっていなくても親子になれることがわかったし、今は心の底からよかったと思っているんです。それが僕の原点で、いつか五島に恩返しを、と。
A:その信念は強そう。五島を出て名古屋に向かわれた理由は?
松下:日本一の会社は、愛知県にあるトヨタだと聞きまして(笑)。20代は唯一夢だけがあったから、絶対諦めないと言い続けていました。起業したときにこだわったのは、家族のような仲間。今も僕が中2のときに“面接”した仲間が、MTGの一員として活躍中です。
A:中2ですでに起業家のマインド!(笑)今も挑戦を続けていますが、不安はないですか?
松下:ありますよ、自信や確信と同じくらい。でも、やらないよりはやって失敗するほうがいい。新しいことをやろうとするときって、周囲の雑音は避けられないもの。でも大事なのは、その際の動機が「善」か否か。もし僕自身の損得や好みが優先していたら、MTGは成長しなかったと思います。
A:この先も驚かされそうですね。
松下:期待してください!
MTG代表取締役社長
1970年生まれ。長崎県五島列島で4人兄弟の末っ子として育ち、高校卒業後に名古屋へ。大手自動車部品メーカー、起業資金調達のため住宅関連の営業を経て23歳で起業。中古車販売業からスタートし、96年にMTG設立。「ユナイテッド・ビューティ」をテーマに、美容機器、化粧品、フィットネス機器を企画開発・製造。韓国、香港、台湾、シンガポールにも進出し、社員700人の企業に成長。同郷である妻との間に6人の子供がいる。
Photos:Kiyohide Hori Text:Eri Kataoka Edit:Aya Aso
日経リュクス「マドンナの化粧品!? ロナウドの運動機器!? 奇想天外の商品続々、株式会社MTG代表取締役 松下剛さんの口説き術」を転載