松下:ブームは長く続かないし、「儲かりそう」と流行に乗って上手くいくほど簡単な業界じゃない。私は美容機器を、ブームではなく文化として定着させたかった。そのためには市場を広げる必要があり、間髪いれずシリーズ商品も開発。リファが売れて胡坐(あぐら)をかいていたら、今はなかったでしょうね。

A:確かにそこから怒涛の新製品ラッシュ! 炭酸ミストケア「プロージョン」にも、マイクロバブルを発生するシャワーヘッド「オーブル」にも驚かされました。

松下:異業種の中にも美容に生かせるものが眠っているんです。MTGにネタ切れはありません。

A:その手があったかと思うようなユニークな商品が多いですよね。開発で意識されていることは?

松下:機能を果たすだけの美容家電はつくりません。効果はもちろん、見るだけで心弾む美しいデザインにもこだわっています。

A:ジュエリーボックスみたいなパッケージも、もらって嬉しい。

松下:とことん追求すると、他が真似しづらくもなるんですよ。

強い情熱と信念を持って、一流の相手と仕事をする。

A:あのマドンナと共同開発した「MDNA SKIN」の真相は?

松下:マドンナは世界中の誰もが知っている美容のリーダー、ビューティーアイコンです。リファがグラミーのギフトラウンジで公式採用されてから、いつかはマドンナと一緒に、と考えていました。

A:また壮大な目標を……。

松下:(笑)。代理店に相談しても、業界を知っている人ほど「無理!」と。100社以上がオファーをして断られているのに、アジアの、それも無名の会社ですからね。でも、僕は誰もが無理だと思うことにこそチャレンジしたいタイプ。だから単独でルートを探しました。

A:たどり着いちゃうのがすごい。

松下:マドンナから絶大な信頼をおかれるビューティースペシャリストのミシェル・ペックに会うことができまして。アメリカから本社に来てもらい、尋常ではない雰囲気の中で商品を見せたところ、空気が一変しました。

A:そこからはトントン拍子?

松下:とんでもない。どういう生き方をしているのかと哲学的なヒアリングから始まり、契約までに3〜4年かかりましたから。契約してからはもっと大変。マドンナはすべてにおいて一切妥協を許さない人で、要求、要望が高い。僕も会社もかなり鍛えられました。

A:クリスティアーノ・ロナウド選手とも契約し、来日まで。

松下:アスレティック・ビューティーを体現するのに彼以上の人はいない。2回断られましたけど(笑)。最終的には製品に興味を持ってくれて。

A:大企業でもないのに、一流の人を口説き落とすその力は一体……。

松下:何でしょう(笑)。ただ、強い信念と本物の製品開発は、他に負けない自負があります。金メダルは、目指さないと取れないのです。

育ててくれた松下家と五島列島に恩返しをしたい。

A:中学生のときから起業すると決めていたとか。何がきっかけで?

松下:僕は五島列島の松下家に養子として育ててもらったんです。いわば生かされた命。

A:えええ! そんなドラマが。