「うちで副業しませんか?」企業側のメリット

 「助っ人採用は、副業という形でその人が持っている専門的なスキルを『間借りする』という発想です」。サイバー・バズ代表取締役社長、高村彰典さんは制度についてそう説明します。

 優秀な人材がスタートアップや大手に流れてしまい、中堅ベンチャーである同社は採用に苦戦した経験があるそう。そうした中で、自社を副業としてもらう形であれば、会社に必要な専門スキルをピンポイントで提供してもらうことが可能ではと考えました。

 「中途のインターンのような感覚で会社を知ってもらう機会にもなります。相性が合えば正規採用につながるかもしれません」(高村さん)

サイバー・バズ 代表取締役社長 高村彰典さん
サイバー・バズ 代表取締役社長 高村彰典さん

 反響は思った以上にあり、これまでに60人以上が応募。実際に6人が助っ人として働き始め、加藤さんもその一人です。

 助っ人の担当業務は人事や営業、広報・IRなどさまざま。成果に対し報酬を払うというスタンスなので、勤務形態は個別の事情に合わせて設定します。即戦力といっても実際にどの程度の力を発揮できるかはやってみて分かる部分が大きく、新しい環境でいきなり100%の能力を出せる保障はありません。

 「すぐに期待通りの結果を求めるのではなく、一緒に考えていくスタンスも受け入れる側には必要だと考えています」(高村さん)

 「助っ人」はスキルで貢献するだけでなく、社員にもいい影響を与えているといいます。

 「助っ人の方と接することで自社以外の世界を知り、『そんな価値観もあるんだ』という刺激が加わります。特に加藤の場合、面談で若い社員に自身のキャリアや他社の事例を話してもらえるのが非常にありがたいです」(高村さん)

 通常なら会社を辞めてから初めて分かる自社のよさに気付くきっかけにもなり、離職率も下がっているそうです。

 また、助っ人採用は多様な人材の活用、特に女性のキャリアを応援する可能性も秘めていると高村さんは話します。

 「育児などで働ける時間が限られている場合、時短勤務にすると給料も下がるので、モチベーションが下がったり、保育園代で消えてしまったりということがあります。なるべく成果に対して報酬を払う仕組みに変えていきたい。専門スキルがないと悩む人がいるかもしれませんが、自分が思い込んでいるだけかもしれません。まずは気になる会社に問い合わせてみるといいのではないでしょうか」(高村さん)

 次回は、副業を容認・推進している企業で働く3人の女性にお話を伺います。三者三様の働き方から、イマドキ副業の姿が見えてくるはずです。

文/谷口絵美 写真/西田優太