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不倫、炎上…マイナス報道から再起した成功例の共通点

2017年9月27日

たたく側の攻撃性をそぐのは素直さやユーモア、そして「諦め」

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 不倫や炎上……マイナス報道や謝罪・釈明会見が後を絶ちません。報道を聞くたび、見るたび「え? またぁ?」「もう聞き飽きたよ……」と感じて疲れてしまっている人もいるでしょう。数々の報道や対応を見て分かったのは、メディアやネットは「オチ」できれいに納得するのだということ、いやむしろ「オチ」を求めているのではないか、ということです。そして、「おなかいっぱい」と感じているのに覗いてしまう私たちの「ちょっとした興味」が、その「負の炎上現象」の1ピースになっているかもしれない、とコラムニスト河崎環さんは考えます。

記者を笑わせて和やかに終わった謝罪会見といえば…

 「円楽師匠、今回の不倫騒動を通じての今のお気持ちを謎かけでどうぞ」
 「えー、今回の騒動とかけまして、東京湾を出ていった船と解きます」
 「その心は?」
 「コウカイの真っ最中です……」

 昨年6月、一般女性との不倫を写真週刊誌で報じられた落語家、三遊亭円楽さんの記者会見は、素直な謝罪の言葉に時折挟まれる笑いに加え、最後には記者や視聴者さえもがなぜかすんなり納得してしまった見事な「オチ」までついて、驚くほど和やかに終わりました。

記者から拍手まで引き出した円楽さんの謝罪会見 (C) PIXTA

 その後、有名番組のレギュラーはどうするのか、落語業界の要職ポストはどうなるのかといった、世間が懸念していた問題も特に波風立つことなく「ステイ」。ネットやメディアが大騒ぎとなってTV番組のレギュラーやCMから軒並み降りたり、仕事に大きな影響が生じた他の不倫報道当事者たちに比べて、その傷の浅さは見事と言うしかありません。

 その3カ月後、私は9月に開催された寄席へ円楽さんの落語を聞きに出かけました。「夏の大反省会」と銘打たれたその日、さぞかし不倫話の裏側や何やらを面白おかしく聞けるのだろうと思っていたら、

 「今日は夏の大反省会ですから、何か反省しなきゃいけないんですけれども、あたくしこの夏はただただ仕事や歌丸師匠のご機嫌うかがいと介護に忙しくて、反省なんて思い当たることが一つもなくてですねぇ……。えっ、何ですか、『不倫の件』? いやアレは6月ですからね、夏じゃありませんからいいんです」

 なんてシレッとしたもので、それも大爆笑。芸歴の長さからくる余裕はもちろんですが、それ以上にこの円楽さんは、不倫騒動さえもきっちりと笑いで落とすエンターテインメントに仕立て上げたのだと、ベテラン落語家としての腕を実感させられました。

傷が浅く済んだ理由は三つ

 (不倫自体の善悪は別として)円楽さんの傷が浅く済んだのには、三つの理由があるのではないかと思います。

 一つ目は、世間にとって必ずしも円楽さんの不倫が意外ではなかったこと。円楽さんは「笑点」に長期レギュラー出演するなど落語家としての長年のキャリアを経て、お茶の間に向けて「インテリだけど腹黒」、そして「ソツのないモテ男なのだろう」という盤石のイメージが既に出来上がっていました。

 しかも(賛否は大いにあるとは思いますが)そこは「浮気くらい芸の肥やし」とされる、古典芸能の世界。つまり、円楽さんの「芸の肥やし」を見て世間はあっと驚きはせず、もともと庶民の暮らしの「いい話」も「だらしのない話」もすべて笑いにして扱う落語の世界ですから、「そりゃ落語家なのだから艶っぽい話だってあるんじゃないの」と大きな意外性がなかった。ニュース性がとがらず、どこか丸い雰囲気を維持できたのは、ひとえに「落語」という分野の恩恵だったでしょう。

 二つ目は、相手が一般の独身女性であり、芸能人同士やW不倫などの「二馬力」ケースに比べて燃焼エネルギーが「一馬力」で済んだこと。

 女性側に大きなニュース性がなく、メディアに出てきて記者会見を開くような必要もないため、世間の関心が円楽さんの対応のみに注がれました。また、円楽さんは当時66歳、相手が40代女性ということで、写真週刊誌には「老いらくの恋」と書かれ、「年齢の割に元気」という印象から同世代男性は大きな関心を持ったかもしれませんが、比較的若いネット世代にとっては共感性に欠けたのです。言葉は悪いですが「あの笑点にいつも出てる円楽じーさんが色気づいて不倫してたw」くらいの、ネット的価値や波及力の低い受け取り方をされたのだと思います。

 最大の理由となる三つ目は、エンターテインメントとしての完成度の高さ。写真週刊誌発売日午後に行った記者会見一本のみで、勝負をつけたのです。本人の意向であくまでも和やかな雰囲気が維持され、まず開き直らず不倫の事実を認めた上で謝罪し、どんなことにも素直に答えるという場のつくり方も、聞き手の攻撃性をあおらないことに成功していました。

 「『芸人は女性にモテるくらいでないと』とよく言われたものですが、時代錯誤だった」と、現代の視聴者感覚にきちんと寄せ、「(妻は)泳がしていてくれる人だから、甘えていた」「今日のスーツも用意してくれて、心配しなくていいから頑張ってとメッセージをもらった。身から出たさびですと言ったら『さびも味になるわよ』と言われた」と、妻との関係性には問題がなくこの件に関して決着がついているとも示唆。

 円楽さんらしいユーモアも散りばめながら、最後にはあの謎かけで上手に「後悔」へとオチをつけ、ワイドショーやネット記事などでも「まるで落語を聞いているようだ」と円楽さんの記者会見は絶賛を浴びました。

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Profile
河崎 環
河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。家族の転勤により桜蔭学園中高から大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での生活を経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆を続けている。子どもは20歳の長女、11歳の長男の2人。著書に「女子の生き様は顔に出る」(プレジデント社)
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