悩み、傷つき、じだんだを踏んだ「女子」だから提言できる政策

 私がライティングを担当した対談(2016年春実施)では、働き方や女性活躍、少子化問題などがテーマで、野田さんの取り組む夫婦別姓や保育義務化、男性育休、同一賃金同一労働などの政策の話に交えて仕事観や現代的な結婚観なども語られました。

 「もう無理はしたくなかった。私は26歳からこの仕事をしていて、他に何の取り柄もない女なんです。今まで子どもも育てていないし。せいぜいお酒が強いくらいで、おじさん化して、仕事で頑張ってきたというのが、私が世の中にかろうじて存在できている自信で。容姿も自信ないし。でも夫は、『いつみても波瀾万丈』というテレビ番組で、郵政選挙の頃に小泉元総理と戦っている私を見て、女の人なのに頑張っているなとすごく気に入ってくれていた。ファンだったんですね。私の仕事っぷりが好きだと言ってくれたので、じゃあこの人に自分を託そうかなと。今後も仕事を続ける上で、そこをやっぱり理解してくれる人と一緖になった方がいいって」

 「私が尊敬する3大要素というのが、私よりも『歌がうまい』『字がうまい』『漢字を知っている』で、彼はオールクリアなんですよ。彼と婚姻届け出すときに、向こうはスラスラ達筆で書いているのに私は下手なのですごく恥ずかしかった。そういう普遍的なものが大事です。一生尊敬できる、一生乗り越えられない優れたところがある。それで一緒になれるんですよね。学歴なんて大したことじゃない」

 「みんな、私の経験に照らせば結婚して家庭は持ったほうがいいと思います。健康管理もできるし、あとは一人でいると仕事のことばかり考えて、リセットできないですよね。リセットできるでしょ?子供がいると。いろいろな法案を抱えて頭が一杯になっている中、あのおむつ交換でスッとバグが取れるというか。あの醍醐味っておむつを変えるときしかわからない。育児していると、嫌なこととか忘れますよね。もっと大変な目に遭うから。世の中で子供ほど理不尽な存在っていないと思う。だっていきなりぶってきたりするもんね! 取引先の人はそんなことしないでしょ(笑)」


(「サイボウズ式」記事/「私は安倍総理に『育児と仕事の両立は無理』とはっきり言った、女性はもっと『できません感』を出そう──野田聖子×サイボウズ青野慶久対談」)記事末URL参照

 自身の経験や普段の暮らしから実感を込めて、シリアスな話題をファニーに語り、しかし聞く者の懐にしっかりとテーマの本質を投げ込み理解させる。息子の写真が写真立てにたくさん飾られた衆議院議員会館の議員事務室で、息子の写真を指して「イケメンでしょ」と照れ、「お酒を飲む席でいろいろな人と話をするのも政治家としての仕事スタイルのうちなのよ」と低くよく通る声で笑う野田さんの姿には、無責任なわがまま女性なんかではなく、むしろ責任感が強過ぎるくらい真面目に仕事に生きて、背負うものをすべて自分なりのバランス感覚とユーモアでこなしてきた私たちの先輩なんだ、と思えました。

 録音を語られた通りに文字起こししたものが文章として成立するのは、論理的で頭の良い人の語りの特徴ですが、野田さんの言葉はすべて文章としてきれいに成立し、しかも後から聞いてもいたって面白く、心の底から感心したのを記憶しています。