• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

リアル過ぎ 大ヒット過労死マンガに響く私たちの叫び(3/5)

2017年4月27日

「弱くない」「逃げていい」「休んでいい」――先輩女性たちの声

このエントリーをはてなブックマークに追加
Facebookでシェア

「死んだら楽になるかなぁ」のその先

 20代後半から30代初め、まさにアラサー。当時の私は、バカがつくほど生真面目で勝ち気でした。学生結婚・出産をして「まっとうな世間の道から外れてしまった」というコンプレックスから、顔の見えない「世間の評判」に勝とうとしていた。人間関係や子供の教育や自分のキャリア、すべてを「絶対に社会に負けたくない、私は若いけれど立派にやっていると認めてほしい」と、どこか憎悪に近い野心や、その裏返しの祈るような気持ちでゴリ押しする日々でした。

 そのために、本当は苦手で心の奥では逃げたくなるようなことでも「私はできる」「乗り越えなきゃいけない」「これは自分が望んでしていることだ」と自分に嘘をつき続け、愛想笑いを続けていました。

 すると、人前でパニック障害や過呼吸を起こすようになり、でもそれを必死で隠し、何事もないかのように振る舞い続けました。朝起きられず、起きてもすぐ昼間にこんこんと眠り続けてしまうことが続くようになりました。

 子どもの世話をしなければいけないのに、奇麗なお母さんの格好をして子どもの送り迎えのために学校に行かなければならないのに、仲良く如才なくお付き合いしなければいけないのに、夫の帰宅までにテーブルにきちんと食事を並べておかなければいけないのに、今日やらなきゃいけない(フルタイムではないチョコキャリの)仕事がたくさんあるのに、と、そんな自分を「こんな専業主婦に毛の生えた程度でつらくなってしまう私は無能だ」「妻も母も自分自身も全部頑張らねばならないのに、こんな程度でつまずく私なんて死んでしまえばいい」ととにかく責めながら、少しよくなってはまた、というのを3年ほど続けたでしょうか。今思うと若くて変に「体力」があったのが、逆に長引かせる原因だったようにも思います。

少しよくなってはまた落ち込む。繰り返しているうちに…(C)PIXTA

 いろいろなつらい出来事が一度落ち着いたかのように見えた頃、自分が透明でもったりとしたゼリー状の膜に包まれ、世の中のすべてが膜の外側で起こっているような感覚になりました。澱(おり)のように分厚くたまった疲れで、体も心も重く、何を見ても聞いても誰に何を言われても、心が動かなくなりました。眠れない。ようやく寝ても早朝に起きてしまう。ふと気付くと、自分でも全く理由の分からない涙が流れていました。

 「死んじゃったら楽になるかなぁ。だってこんなポンコツの私、社会の誰も本当には必要としていないもの。本当のところ、妻としても、母としてでさえ代わりはいる。私なんていなくたって、世の中平気で回るもの」。

もう歩けない、と心療内科に電話した

 ある日、私は家族と出掛けた真新しいショッピングモールの入り口で、楽しそうに笑いさざめく群衆の中へ入っていこうとした瞬間、足が止まりました。自分の意思で足を動かすことができなくなりました。「幸せそうな人々の喧騒」が、当時の私にはキャパシティーオーバーでした。

 ああもういよいよダメかもしれない。もう歩けない。
 これは人の助けがいるのかもしれない。

 家族を先に行かせて、私はすぐ近くのエレベーターホールに身を隠し、以前街で見かけた心療内科に電話をかけました。「あの……すみません、自分では分からないのですが……私、もしかすると先生に診ていただく必要があるのではないかと思うのです」

 妙な言い方です。でもそうとしか言えないのでした。おかしな患者に、受付の女性はこう聞きました。「もうダメ、という感覚がありますか?」

 「自分では分からないんです」私は繰り返しました。「……でも、たぶん、もう無理なんじゃないのかな、って……」口にした途端、電話口ではらはらと涙がこぼれました。

 重症ではなく、当時いわれていた「軽うつ」で済んだのは幸いでした。そこから1年半、通院も投薬も周囲には隠しながら、心のバランスを取り戻しました。

 あの頃、あんなに肩肘張らずに、周りの人に「助けてください」と言えたなら。あまりにも、あまりにも生真面目で勝ち気だった当時の私は、他人の優しい言葉を振り切って走っていくうちに、その場に座り込んでいたのですね。

 だから汐街コナさんの漫画がツイッターで30万リツイートされ、大評判となって私の目にも届いたとき、

 「これ、私のことだ。」

 と、私も思ったのです。

この記事をSNSにシェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加
Facebookでシェア

Facebookコメント

※Facebookのコメント機能は、Facebookのソーシャルプラグイン機能を用いて実現してい ます。本機能、およびコメントの内容について、日経ウーマンオンラインは一切の責任を負い ません(日経ウーマンオンラインからのコメントを除く)。また、コメントを非表示にしたり、機能を停止することがあります。

Profile
河崎 環
河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。家族の転勤により桜蔭学園中高から大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での生活を経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆を続けている。子どもは20歳の長女、11歳の長男の2人。著書に「女子の生き様は顔に出る」(プレジデント社)
関連キーワードから記事を探す
コミュニケーション術人間関係の悩みお仕事術

Topics

CloseUp

WOL Selection

PAGE TOP

ログインしていません。

  • ログイン
  • 無料会員登録

Pickup

Focus

最新刊のご案内

  • 仕事を楽しむ 暮らしを楽しむ
    日経ウーマン 11月号

    特集:1年後、私が劇的に変わる!「すごい手帳のコツ300」【特別付録】その1:アフタヌーンティーコラボ オリジナル万年筆 /その2:冊子『まんがで分かる!お金がどんどん増えるルール』」

  • もっと健康に、もっと美しく
    日経ヘルス 11月号

    特集 ゆがみ解決!たるみも消える!10日間体幹リセットで美姿勢!腹ペタ!別冊付録 脱・むくみ体質 リンパ流しバイブル」

  • 働くママ&パパに役立つウェブマガジン
    日経DUAL 10月号

    「日経DUAL」10月号は「ウチの子にぴったりな進路はどれ? 受験&進学総覧」「企業で人生成功させる必須6条件」2本の大型特集のほかに、【妊娠・復帰】【保育園】【小学低学年】【小学高学年】と、子どもの年齢を4つに分類し、それぞれの年齢で今知りたいノウハウをお届します。「不妊治療 顕微授精では精子の質的低下を補えない」「伝説のコーヒー店『カフェ・バッハ』女店主が作る子ども向けおやつ」など注目の記事も満載です。

働く女性 必読の書

おすすめ本日経ウーマンの本日経ヘルス&プルミエの本

もっと見る

キャリア&スキル
就職・転職
働き方
副業
お仕事術
コミュニケーション術
資格・語学
マネー
PC・スマホ
教養・マナー
ウーマン・オブ・ザ・イヤー
ヘルス&ビューティ
ダイエット
カラダの悩み・病気
メンタルヘルス
健康レシピ・食材
メイクアップ
スキンケア
健康知識
ライフ
恋愛・結婚
人間関係の悩み
お買い物・節約術
整理・収納
ファッション
グルメ
エンタメ
旅行・お出かけ
暮らし方

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

PC版 | モバイル版

日経ウーマンオンライン

広告をスキップ