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リアル過ぎ 大ヒット過労死マンガに響く私たちの叫び(3/5)

2017年4月27日

「弱くない」「逃げていい」「休んでいい」――先輩女性たちの声

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「死んだら楽になるかなぁ」のその先

 20代後半から30代初め、まさにアラサー。当時の私は、バカがつくほど生真面目で勝ち気でした。学生結婚・出産をして「まっとうな世間の道から外れてしまった」というコンプレックスから、顔の見えない「世間の評判」に勝とうとしていた。人間関係や子供の教育や自分のキャリア、すべてを「絶対に社会に負けたくない、私は若いけれど立派にやっていると認めてほしい」と、どこか憎悪に近い野心や、その裏返しの祈るような気持ちでゴリ押しする日々でした。

 そのために、本当は苦手で心の奥では逃げたくなるようなことでも「私はできる」「乗り越えなきゃいけない」「これは自分が望んでしていることだ」と自分に嘘をつき続け、愛想笑いを続けていました。

 すると、人前でパニック障害や過呼吸を起こすようになり、でもそれを必死で隠し、何事もないかのように振る舞い続けました。朝起きられず、起きてもすぐ昼間にこんこんと眠り続けてしまうことが続くようになりました。

 子どもの世話をしなければいけないのに、奇麗なお母さんの格好をして子どもの送り迎えのために学校に行かなければならないのに、仲良く如才なくお付き合いしなければいけないのに、夫の帰宅までにテーブルにきちんと食事を並べておかなければいけないのに、今日やらなきゃいけない(フルタイムではないチョコキャリの)仕事がたくさんあるのに、と、そんな自分を「こんな専業主婦に毛の生えた程度でつらくなってしまう私は無能だ」「妻も母も自分自身も全部頑張らねばならないのに、こんな程度でつまずく私なんて死んでしまえばいい」ととにかく責めながら、少しよくなってはまた、というのを3年ほど続けたでしょうか。今思うと若くて変に「体力」があったのが、逆に長引かせる原因だったようにも思います。

少しよくなってはまた落ち込む。繰り返しているうちに…(C)PIXTA

 いろいろなつらい出来事が一度落ち着いたかのように見えた頃、自分が透明でもったりとしたゼリー状の膜に包まれ、世の中のすべてが膜の外側で起こっているような感覚になりました。澱(おり)のように分厚くたまった疲れで、体も心も重く、何を見ても聞いても誰に何を言われても、心が動かなくなりました。眠れない。ようやく寝ても早朝に起きてしまう。ふと気付くと、自分でも全く理由の分からない涙が流れていました。

 「死んじゃったら楽になるかなぁ。だってこんなポンコツの私、社会の誰も本当には必要としていないもの。本当のところ、妻としても、母としてでさえ代わりはいる。私なんていなくたって、世の中平気で回るもの」。

もう歩けない、と心療内科に電話した

 ある日、私は家族と出掛けた真新しいショッピングモールの入り口で、楽しそうに笑いさざめく群衆の中へ入っていこうとした瞬間、足が止まりました。自分の意思で足を動かすことができなくなりました。「幸せそうな人々の喧騒」が、当時の私にはキャパシティーオーバーでした。

 ああもういよいよダメかもしれない。もう歩けない。
 これは人の助けがいるのかもしれない。

 家族を先に行かせて、私はすぐ近くのエレベーターホールに身を隠し、以前街で見かけた心療内科に電話をかけました。「あの……すみません、自分では分からないのですが……私、もしかすると先生に診ていただく必要があるのではないかと思うのです」

 妙な言い方です。でもそうとしか言えないのでした。おかしな患者に、受付の女性はこう聞きました。「もうダメ、という感覚がありますか?」

 「自分では分からないんです」私は繰り返しました。「……でも、たぶん、もう無理なんじゃないのかな、って……」口にした途端、電話口ではらはらと涙がこぼれました。

 重症ではなく、当時いわれていた「軽うつ」で済んだのは幸いでした。そこから1年半、通院も投薬も周囲には隠しながら、心のバランスを取り戻しました。

 あの頃、あんなに肩肘張らずに、周りの人に「助けてください」と言えたなら。あまりにも、あまりにも生真面目で勝ち気だった当時の私は、他人の優しい言葉を振り切って走っていくうちに、その場に座り込んでいたのですね。

 だから汐街コナさんの漫画がツイッターで30万リツイートされ、大評判となって私の目にも届いたとき、

 「これ、私のことだ。」

 と、私も思ったのです。

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Profile
河崎 環
河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。家族の転勤により桜蔭学園中高から大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での生活を経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆を続けている。子どもは20歳の長女、11歳の長男の2人。著書に「女子の生き様は顔に出る」(プレジデント社)
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