女の人生には、いろいろな役割を負うさまざまな瞬間があります。幼い頃や学生時代、そして就職活動や社会人生活、友達の結婚式や婚活合コンにおいてまで、私たちは「その場にふさわしいドレスコード」を緩やかに共有し、憧れや反発や自負を感じながらそれに沿って生きてきた部分もあるのではないでしょうか。

あなたの人生に「コスプレ」はありましたか

 女の人生とファションは不可分で、それは時として自覚的なコスプレでもある、と私が強く思うのは、受験や就職活動、結婚式など、人生の節目となるイベントでの装い。

 特に就活では、さまざまなドラマや映画でも描かれてきた通り、みんな同じ黒いリクルートスーツに黒髪、黒バッグ、ナチュスト(ナチュラルストッキング)に黒パンプスを履いてベージュのトレンチコートを羽織った女子がぞろぞろと大企業の説明会へ吸い込まれていく光景が見られます。

ただ今、就活コスプレ中です (C)PIXTA
ただ今、就活コスプレ中です (C)PIXTA

 その姿に対してはいろいろな意見があるでしょう。

 個性が大事と育てられたはずの若い世代が、結局は集団で同じような格好をしているのを嘆く人もいるでしょうし、逆に日系大企業の人事担当者からは「いや、会社というのは規模が大きくなればなるほど「個性」だけでは仕事になりません。いかに一つの目標に向かって個々人の役割を果たしていけるかが重要なのだから、能力はあっても平時は個性を殺して動ける人材が欲しいんです」との(あまり昭和時代と本質的に変わらない?)声も聞いたことがあります。

女子は肝心な時こそ「定型」に「擬態」する?

 学生時代、雑誌からそのまま出てきちゃったようなゆるふわモテ系だったり、激しい色使いが目に痛いストリートやアート系だったり、自然と同化しかけたナチュラル系だったり、あるいは毎日その辺にあったものを取りあえず着ている「ファッションなにそれおいしいの系」だったりと、女子にもいろいろなジャンルがあるものです。

 でもその女子たちが就職という暫定的ゴールへ向かって、等身大の自分をちょっとくらい偽り、オールジャンル「擬態」戦に突入する、その擬態ユニフォームこそが黒いリクルートスーツ。

 メークとかスーツとかナチュストとかパンプスとか、その手のコスプレで自分に魔法をかける。「みんな同じ顔になるのって、なんだかね……」なんて言いつつ、「定型」があるおかげで、それにさえ近づけておけば安心でもある。女子には、女子だけが使える魔法があるのかもしれません。

 個性が大事と育てられたはずの世代だって、就活ともなればみんな同じ格好に甘んじるのは、それが個性うんぬん以前にドレスコードという名の社会的「マナー」であり、それを守ることは(内定獲得の祈りを込めて)差し当たり有利と思われるから。

 女子中高生も女子大生も、就活もお仕事女子も、花嫁も新妻もインスタママも、女子の人生って、割と一見して「ああ、女子高生ね」「就活ね」なんて、それと分かるコスプレ人生なんですよね。

 さて、先輩の皆さんにも、そんなコスプレ人生を聞いてみました。すると出てくる出てくる、かわいかったりイタかったり数々の泣き笑いエピソード……。