楽しいけど悩ましい“タラレバ”のワナ

 麻耶さんは現在、さまざまな可能性を手にしています。Yさんと付き合う可能性、Kくんと付き合う可能性。両方と付き合わない可能性、何なら両方と付き合えちゃう可能性。この状況が麻耶さんを迷わせ、悩みの原因になっています。

 しかしその反面、さまざまな可能性があるというのは、実は愉快な状況でもあります。そうなれば……こうだったら……ああかもしれない……と、いわゆる“タラレバ”というのは楽しいし、いくらでも妄想を広げることができてしまう。だからYさんの言動から期待要素を読み取ることがやめられないし、Kくんを逃した場合の後悔を先回りして考えちゃうのもこのためです。

 つまり麻耶さんは、さまざまな可能性に苦しめられている反面、それを手放したくもないというアンビバレントな状況にある。相談文の最後にある「どうしたらいいでしょうか?」という問いかけは、「自分では決められないから決めてほしい!」という麻耶さんの叫びにも受け取れます。

 それに対して我々は、ある意味「自分で決めろ」と提案しているに等しい。Yさんをキッパリ諦めるのも、Kくんを振るのも、麻耶さんにとって能動的な“決断”になります。決断とは「これに決める」という意味だけでなく、「それ以外の可能性を断つ」ことを含む行為です。

 Kくんと付き合うことは、Yさんと付き合えるかもしれない可能性を断ち切ることだし、Yさんを諦めないことは、Kさんと付き合ったら手にできるかもしれないものをすべて手放すということ。これこそが、現状から抜け出すための方法だと考えます。