なぜテクニック化は避けたほうがよいのか

 これまで書いてきたように、色気は言いづらさや恥じらいといったハードルを乗り越えるという構造そのものによって生まれます。テクニックやマニュアルはそのハードルを低くして乗り越える労力をできる限り小さくすることなので、そもそも色気の源泉から水を抜いていくような矛盾した行為だと言えます。

テクニック化のリスク

 一方で、自分の中のハードルを乗り越えなくても、テクニックとしていわゆる「重い話」や「深い話」をすれば相手は自己開示をしたと思ってくれる可能性はあります。しかし、それは非常にリスキーな行為です。

 例えば恋愛における告白は最大の自己開示ですが、これをテクニック化すると「好きって言えばセックスできる」というタチの悪いナンパ師の手口になります(だから軽々しく告白してくるような男性には注意が必要です)。そのような男性が陥りがちなのは、自分の気持ちとはまるで異なる甘い言葉を吐くことで内面が空洞化していき、最終的には自分の気持ちが本当に分からなくなってしまうという事態です。

ナンパ師は自分の気持ちが分からなくなりがち (C) PIXTA
ナンパ師は自分の気持ちが分からなくなりがち (C) PIXTA

 相手をだますことよりも、自分をだますことのほうがはるかに困難なのです。

 これが、テクニックやマニュアルに頼るのを避けたほうがいいと考える理由です。