労働時間の上限設定とインターバル規制導入が焦点

 次に社会としてやらなければいけないことは何でしょうか。 

 「裁量労働・みなし労働の職場が増えていますが、今、求められるのは労働時間の規制緩和ではなく、時間外労働や休日労働、深夜労働に有効な規制をつくっていくことが重要です。例えば、EUのように、24時間につき最低連続して11時間休息時間を義務化する『インターバル規制』の導入は、休息と睡眠時間を守る上で大変効果的な法律だと思います」(川人弁護士)。

 11月23日、父親の子育て支援に取り組むNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の代表理事・安藤哲也さんなどが長時間労働是正を目的に、インターネットで集めた約4万人分の署名を塩崎恭久厚生労働省と加藤勝信働き方改革担当大臣に届けました。これは、高橋さんの過労自殺を受けて10月15日から署名の募集を始めたもので、約1カ月で4万人が突破したといいます。

 署名では、労働時間の上限設定の法制化と、終業から始業まで一定の休息時間を設ける「インターバル規制」の導入を求めています。労働基準法の法定労働時間は1日8時間、1週間40時間と定めていますが、36(サブロク)協定を労使で締結することで、会社は法定労働時間を超えて残業を命じることができます。

 36協定があっても時間外労働は1カ月45時間、1年で360時間を限度とする基準があります。しかし、特別な事情が生じた場合、「特別条項」を結べば、年間6カ月まで、例外的に限度時間を超えることができることになっていますが、そこに上限を設定しようとするものです。

 安藤代表理事は、「異例のスピードで賛同者が4万人に達しました。かつてない関心の高さを感じます。両大臣から『前向きに検討したい』との言葉が返ってきました。今後の展開に期待したい」と語っています。