「自分には無理」を打ち破るために

――現在、日本の民間企業の男性育児休業取得率が2.3%(2014年度)ですから、非常に進んでいるといえますね。では、「意識面の改革」についてはいかがでしょうか。

Wanda:ダイバーシティを進めるにあたり、阻害要因となっているのが、人間が持っている無意識の先入観や固定観念である「アンコンシャス・バイアス」です。

 他人に対する先入観や偏見もあれば、自分自身に対して「私にはできない」といった思い込みを抱く場合も。無意識の様々な偏見は、時に適切な判断を曇らせ、ネガティブな影響を及ぼします。そうした考えを克服するような支援も、会社として行っていくべきだと思っています。

――J&Jでは、「無意識のバイアス」に対する取り組みを行っていますか?

Wanda:グローバルなプログラムとして、アンコンシャス・バイアスを克服するための啓蒙活動を行っています。先日、日本国内の各部門のリーダー450人を集め、アンコンシャス・バイアスについてのセッションを行い、克服するにはどうすればいいのか、どんな風に考えればいいかを皆さんにお話ししました。こうしたトレーニングを企業教育として組み入れることで、よりよい意識で働いてもらいたいとの考えがあります。

――アンコンシャス・バイアスを克服するには、どうすればよいのでしょうか。

Wanda:大切なのは、まず自分自身が無意識の固定観念に縛られていることに気づくことです。人間の脳は、決断を急かされると、自分が考える本来の正しい意思決定ではなく、知っていることをグループ化してその中から決断しようとするため、ステレオタイプ的な考え方にとらわれがち。ですから、何事も瞬時に判断せず、しっかりと考えてから結論を出すことが大事なんですね。

――日本では、古い価値観に凝り固まった中高年の男性管理職層を「水が染み通らない」「変わらない」という意味から「粘土層」と呼んでいます。彼らが企業内の意志決定層を占めているため、女性活躍がなかなか進まないといわれているのですが、よい改善策はないでしょうか。

Wanda: 「粘土層」を払拭するためのひとつの方法として、女性が意志決定層に参画することも大事ですし、企業経営者が明確な方向性を打ち立て、どういう組織になりたいのかというアイデンティティを示すことも欠かせません。また、中間管理職に対し、ビジネスの結果に責任を負わせることも重要だと思いますね。

 次回は、ワンダさん自身のキャリアの転機、そして働き続ける日本の女性へのメッセージをお届けします。

文/西尾英子 写真/鈴木愛子

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