主婦から人気FPへ。偶然参加したセミナーがキャリアの転機

 もう一人は「日経WOMAN」の連載でおなじみのファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんです。働く女性の気持ちに寄り添い的確にかつ詳細にアドバイスをする深田さんの人気は高く、日経ウーマンの連載は既に14年目に入りました。数多くの書籍を出し、セミナーはすぐに満員。まさに成功したFPである深田さんのキャリアの転機にも、「偶然の出来事」がありました

 そもそも深田さんがFPという仕事に出会ったのも偶然でした。深田さんは28歳で、「独立して自営業になるために」会社を退職しますが、その時点では何をするかは決まっていませんでした。そのときに書店で手に取ったマネー誌でFPという仕事があることを知り、興味を持ったのがFPになるきっかけでした(今の活躍からしたら信じられないことですが、最初、深田さんは、「FPという仕事があるのか、すごいな。でも、金融機関にいたわけじゃないから、私には無理だな」と思ったそうです)。

 その後、FP講座を受け、FPの資格を取りましたが、当時深田さんは一人の主婦に過ぎません。実務経験もなかったため、なかなかうまく仕事につながりませんでした。

 しかし、そのときにたまたま参加していたセミナーが大きな転機となります。セミナーに登壇した高名なFPが壇上で、「今、一人FPを育てているけれど、もう一人育てたいと思っている」と発言したのです。人気FPの言葉に、300人はいるであろう会場はざわめきました。セミナー終了後、彼のもとには名刺交換のために長蛇の列が出来ました。深田さんもその一人でした。

 そのセミナーが開催されたのは96年7月です。「たぶんみんな応募するし、すごい競争倍率になる。未経験の自分が応募してもどうせダメに違いない」とダメもとで履歴書を送りました。しかし、深田さんは見事合格、9月には彼の会社で働き始めます。第一線の有名なFPのもとでキャリアの第一歩を踏み出したのです。
「後にたくさんの人から『彼の会社で働けるのはすごい』『どうしてそれができたの?』と聞かれたんですが、なんと、履歴書を送ったのが、私だけだったんです」

 深田さんからこの話を伺って、私は本当に鳥肌が立ちました。その会場には何百人もFPやFPになりたい人が集まっていて、彼のもとで働きたいと思った人は何人もいたはず。しかし、”履歴書を送る”という具体的な行動を起こした人は深田さん、ただ一人だけだったのです!

 「いいな」「やりたいな」「やろうかな」と思った人はたくさんいたとしても、そこから行動まで起こす人は本当にごく少数なんですね。そして積極的に行動を起こしたごく少数の人がキャリアの次の扉を自分で開け、ハッピーキャリアの道を歩み出すのです。だから積極的に行動を起こすことが本当に大事なのです。深田さんの初期のキャリアのお話を聞いて、よりその感を強く持ちました(私が、「号泣の不本意な異動だったのに全く後悔していない理由」で「勇気を出して一歩踏み出しましょう」「積極的に行動しましょう」と書いたのも、そういうことです)。

偶然な出来事が起きたときに、どんな行動を取れる? (C)PIXTA
偶然な出来事が起きたときに、どんな行動を取れる? (C)PIXTA

 これまで、目標を立ててコツコツ積み上げることが大事だと思ってきました。しかし、成功する女性たちを見ていると、それよりも「偶然の出来事」が大事だということが分かりました。私は50歳で法政大学大学院に入りましたが、そのときに、クランボルツの「計画された偶発性理論(Planned Happenstance)」を学び、「まさにこれまで取材した成功した女性たちのことだ!」と思いました。

 有名な理論なので知っている方も多いと思いますが、改めてご説明しますね。