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飛騨の森林と世界中のクリエーターをデジタルでつなぐ

2017年6月6日

Vol.09 林千晶さん(飛騨の森でクマは踊る 代表取締役社長)

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 岐阜県の北端に位置し、面積の93%を森林が占める飛騨市。優れた木工や木造建築の技術が継承されてきたことで知られ、白壁土蔵の街並みが残る飛騨古川には、美しい匠の文化が町中に息づいている。そんな伝統の技を生かし、森林資源に新たな価値を生み出そうと2015年に設立されたのが、第3セクターの株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)だ。社長を務めるのは、国内外2万5000人のクリエイターネットワークを保有し、多様なクリエイティブサービスを手がけるロフトワーク代表取締役の林千晶さん。なぜ飛騨で、3セクという形で地域再生に関わろうと思ったのか。狙いと可能性について聞いた。

林千晶(はやし・ちあき)
1971年生まれ。アラブ首長国連邦育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院卒業。花王、共同通信社ニューヨーク支局を経て、2000年にロフトワークを起業し、代表取締役に就任。2万人のクリエイターが登録するオンラインコミュニティ「ロフトワークドットコム」、国内外に展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」などを運営する。15年4月から現職。著書に「シェアをデザインする」「Webプロジェクトマネジメント標準」など。MITメディアラボ所長補佐、経済産業省 産業構造審議会製造産業分科会委員なども務める。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017 デザインものづくり賞」を受賞

断るつもりで飛騨を訪問 暮らしの知恵と美しい街並みと組木の技術に魅せられて

最初の訪問で林さんを魅了した飛騨古川の街並み

――はじめにヒダクマ設立の経緯からお伺いします。林さんが初めて飛騨市を訪れたのはいつでしょうか。

:2014年2月です。今日のように雪がたくさん積もっている寒い時期でした。

 そもそも私は高山と古川の違いも分からないくらい、飛騨地域のことはほとんど知りませんでした。ロフトワークと共にヒダクマに出資している株式会社トビムシは林業のコンサルティングを行っている会社で、初めに飛騨市はトビムシに地域活性についての相談を持ちかけていました。その中で、飛騨市の森林の約7割を占める広葉樹に新しい価値を生み出す事業をやってみてはどうかという話になり、トビムシからロフトワークに声がかかったんです。

 ただ、最初は断るつもりでした。ただでさえ海外出張も多く、東京から5時間もかかるところに関わるのは無理とずっと言い続けていて。「とにかく1回だけでも来てみてほしい」と言われて、旅行を兼ねて家族と行ってみることにしました。

――そのときの飛騨の印象はいかがでしたか。

:2つのことに感銘を受けて、それがヒダクマをつくる原動力になりました。

 1つは暮らしの知恵です。古川よりもっと山あいの地域に食事に連れて行ってもらったのですが、囲炉裏を囲んで食べた鮎や五平餅、山菜がとってもおいしかった。なんでこんなにおいしいんですかと地元の方に尋ねると、4月に採ったものを1年中食べられるように保存してあるとのこと。旬のものを旬の時期に採って保存しているから雪が降っても平気なんだと。ああ、こういう知恵って、私たちがもっと学びたいものだなと感動しました。

 もう1つは古川の素晴らしい街並みと、それを支えてきた匠の技術です。飛騨には組木という伝統技術が何百年と継承されてきていますが、それがいま失われつつあります。なぜなら、若い人が建築家にはなるけれど、大工にならないから。この美しいものを、私たちが生きている時代に途切れさせたくないと思いました。

 ロフトワークには、デジタルファブリケーションを使い、ものづくりが誰でもできる「FabCafe」(注)があります。組木を3Dデータ化して、建築家と木をつなげる場をつくれば、コンピュータで設計するこれからの若手建築家も、無垢の木を昔の大工のように使えるのではないか、そうすれば日本の建築の可能性が広がるのではないかと考えました。

江戸時代から続く酒蔵などをリノベーションしたデジタルものづくりカフェ「FabCafe Hida」は2016年4月にオープン。レーザーカッターやカッティングマシン、3DプリンターやUVプリンターなどの最新のものづくりの設備を備えたカフェだ。厳選されたコーヒーとこだわりのフードを提供する
古くから「匠の里」として栄えた飛騨市には様々な伝統技術がある。林さんが魅せられた組木は、飛騨の匠文化館で体験できる(左)。家々の軒に見られる肘木の彫刻「雲」は、飛騨大工の紋章だ(右)

(注)FabCafeとは、ロフトワークが展開するデジタルものづくりカフェ。飲食を提供するカフェとしての機能のほかに、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル機器を使用したスタンプなどの制作、木工などが可能なものづくりの機能がある。国内は渋谷と飛騨の2カ所、ほかに台湾やバルセロナなど海外6カ所に展開。

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Profile
麓幸子
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BP総研マーケティング戦略研究所長
日経BP社執行役員。1984年筑波大学卒業。同年日経BP入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年日経BPヒット総合研究所長を経て現職。法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府研究企画委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書に『女性活躍の教科書』『就活生の親が今、知っておくべきこと』など多数
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