配偶者控除廃止で主婦はもっと働かなきゃいけない?

 このように、妻が年収を抑えている方が税金などの負担が抑えられる状況が、女性の就労を妨げるとして、政府は2017年の税制改正で配偶者控除を見直す検討を始めました。そこで挙がっている案が「夫婦控除」です。早ければ2018年1月から導入されます。具体的な内容はまだ決まっていませんが、働き方にかかわらず、夫婦であれば一定額を税額から差し引く方向で検討されています。

 専業主婦の妻は優遇されすぎているのだから、配偶者控除はなくなってもいいのでは、という意見もあります。ですが、経済的にゆとりのある専業主婦はそれほど多くはありません。厚生労働省の「公的年金加入者等の所得に関する実態調査(2012年)」によると、夫の扶養に入っている女性(※3)のうち、収入がゼロの人は37.5%です。結婚したら家事などに専念する人ばかりというわけではなく、残りの約6割の人はパートなどで働いています。

 また、パートをしている主婦の多くは、実は103万の壁などをそれほど意識していないというデータもあります。厚生労働省の「平成23年パートタイム労働者総合実態調査の概況:個人調査」によると、年収を抑えるために労働時間などを調整しているパート主婦は21%にすぎません。72%の人は調整をしていないのです。その理由は、調整をする必要がない、調整を気にしていないとのことですから、すでにパートをしている主婦はできる限り働いているのではと推察できます。そんななかで配偶者控除が廃止されれば、もっと働かざるを得なくなるのかもしれません。また、今は働いていない専業主婦も、家計の税負担が大きくなれば、働くことを余儀なくされるケースもあるでしょう。