あなたは、手書き文字を必要とするビジネスシーンで、堂々とペンを振るうことができますか? このシリーズでは手書き文字に悩む3人の読者が登場し、美文字研究家の青山浩之さんによるレッスンを体験。自分らしい美文字を書くためのコツを教わります。今回は、教育関係の仕事をしている赤木さんのレッスンです。

アドバイスいただくのは、美文字練習帳シリーズの手本・監修を手掛ける
■青山浩之さん
横浜国立大学教育人間科学部教授/美文字研究家/全国大学書写書道教育学会常任理事
全国の学校で行われる書写・書道に関する研究や教員の養成をはじめ、学校教科書の執筆・編集などを行う。多くの人に書写・書道の魅力を伝えたいと、『ためしてガッテン』『あさイチ』『まる得マガジン』『スクールライブショー』(いずれもNHK)、『PON!』(日本テレビ系)などテレビ番組の講師出演や全国各地での講演活動などでも活躍中。 『美文字の鉄則』(日経BP社)、『仕事がもっとうまくいく! 気持ちが伝わる「手書き」ワザ』(日本経済新聞出版社)、『10日で「美文字」が書ける本』(講談社)など著書多数。美文字練習帳シリーズ(日経BP社)は累計30万部に。 http://www.field-design.info/

赤木 私は今、カンファレンスの事務局で働いています。

青山 赤木さんは、手書き文字にどのようなお悩みをお持ちですか?

赤木 仕事で手書きをする機会は少なくて、付箋にメッセージを書いたり宛名書きをしたりする程度です。ただ、重要な書類を送るときの宛名書きでは特にプレッシャーを感じてしまい、うまく書けないことが多いんです。

青山 赤木さんの文字を拝見すると、形が整っていてきれいに書けていると思いますよ。

赤木 ありがとうございます。高校生まで書道を習っていたのですが、社会人になって手書きの機会が激減しました。当時と比べるとどうしても、思うように書けないな……と思ってしまいます。

青山 なるほど。確かに、手書きの機会が少なくなればそれだけ感覚は鈍るものですよね。でも、「お」など、形を整えるのが難しい字ですが、書道経験者だけあってバランスよく書けています。ペンの持ち方もきれいで指先の動きもスムーズですよ。

赤木 ありがとうございます。

青山 さらに完成度を上げるなら、全体のバランスを意識してみるといいですね。たとえば、漢字・ひらがな交じりの文字列を書くときに、漢字とひらがなのサイズを調整するんです。

赤木 漢字とひらがなのサイズ……ですか?

青山 そうです。さきほどの赤木さんの文字を見てみると、書き出しの「お」とそれに続く「世話」がほぼ同じ大きさになっています。こういう場合、ひらがなの大きさを漢字の7割程度にしてみると、バランスが良くなるんですよ。

赤木 そうなんですね。漢字とひらがなの大きさをあまり意識しないで書いていました。

青山 ひらがなは、漢字と比べて画数が少ない。ですから、同じサイズにして並べると字の中のすき間が目立って膨張して見えるんです。

赤木 比べてみると確かに、ひらがなを小さめにしたほうが整然とした印象になります。

青山 私は、文字列にも個性があっていいと思っています。ですから、音楽にリズムや緩急があるように、文字列の並びやサイズ感にもそれぞれの雰囲気に合ったバランスがあっていい。ただし、誠実な印象を与えたいときなどには、このように気を配ってみると良いかもしれません。

赤木 そうですね。

青山 一文字一文字をきれいに書くことに加えて、こうしたコツを知っておけばさらに美文字度がアップするはずですよ。

赤木 はい。早速実践してみたいと思います。