お金の使い方にまつわる悩みは、どんな人も持っています。解消法を、脳科学の見地から脳神経外科医の菅原道仁さんに解説してもらいました。第1回でご紹介したのは、1000万円貯めても不安になる原因と解決方法。続く2回目の今回は、「幸せなお金の使い方」について聞いてみましょう。

第1回 私たちが「1000万円貯めても不安を消せない」理由
第2回 貯蓄減っても後悔なし 脳科学的・幸せなお金の使い方(この記事)
第3回 ムダ遣いは「脳」のせい 幸せな人生とお金を守る方法 (6月20日公開予定)


貯めるだけでなく、時にはお金を生かすことで幸福度アップ

 ひたすら貯蓄にまい進するのは、なかなか大変。時にはお金を使うケースもありますが、絶対に避けたいのは「ムダ遣いしちゃった」と後で悔やむことです。では、たとえ貯蓄額が減っても満足できる、そんな使い方はあるのでしょうか? 菅原さんによると、答えはイエス。

 「自分のためになる使い道なら、ムダ遣いしたとは思いませんよね。例えば同じCDを100枚買うといったお金の使い方でも、本人が幸せであればいいんです。ムダと思うかどうかは、価値観の違いですから。それを目標にお金を貯めるのも、本人が納得しているならアリでしょう。逆に、人の目を気にした使い方では、幸福度は高くなりません」

 そう言って、「僕としては、自己投資に使うのが一番だと思います」と続ける菅原さん。

 「例えば、資格取得のために学校へ通う、といった使い方です。そうやってスキルアップすれば、手に入るお金も増えてくるもの。使わなくては損とまでは言いませんが、自己投資に使えば、ただお金を貯めるだけより幸福度は上がります。極端な例えですが、日本がハイパーインフレに見舞われたら、1000万円だってただの紙くずになるかもしれません(笑)。ですから、自分にとっての幸せな使い道を模索してみてほしいですね」

ムダ遣いとは思わない! 自分の糧になる「体験型消費」

「モノ」ではなく、「体験」にお金を払ってみよう。例えば… (C)PIXTA
「モノ」ではなく、「体験」にお金を払ってみよう。例えば… (C)PIXTA

 もう一つ、お金が生きる使い道として菅原さんが提案するのは、「体験型消費をすること」

 「モノを買うのではなく、体験できることにお金を払う使い方です。例えば、旅やライブに行ったり、ゴルフレッスンや英会話スクールに通ったりといったことですね。ここで大事なのは、他の誰かに左右されるのではなく、自分が第一にあること。『今なら入会無料キャンペーン中!』なんて文句に誘われて英会話を習っても、後悔する人は多いと思います。満足度を上げたいなら他者に流されず、自分で『英会話を習得してビジネスに役立てたい』というストーリーを描いて実行することが大事ですね」

 この「ストーリーを描くこと」こそ、満足度の高いお金の使い方だとか。

 「意外かもしれませんが、ムダ遣いか否かを判断するのに、金額はほとんど関係ありません。たとえ安価なモノでも、自分にとって必要がなければムダだし、何年かのローンを組んだとしても、ストーリーを描いていたなら『いい買い物をした』と思えるでしょう」