「安心」のために、具体的な目標と貯蓄額を設定する

 では、1000万円貯まっても不安な気持ちを解消するには、具体的にどうしたらよいのでしょうか?

 「結局、『1000万円貯めること』が人生の目標ではなかったから、達成しても不安になるんだと思います。幸せになれると信じていたのに、いざ実現して見えた景色が想像していたものとは違っていたということ。こうした状況に陥らないためには、何に対して不安なのかを知らなくてはいけません。仕事なのか、結婚なのか、老後なのか。その上で、本当にやりたいことや目標を見つけていく必要があるのです」

 そして、このときに必要なのが「目標は具体的なものにすること」だそう。

 「例えば老後資金一つとっても、ただ『老後の不安を解消したいから1000万円貯める』では具体的とは言えません。そこからさらに一歩踏み込んで、老後には月々いくら必要かを計算したり、入りたい介護施設を決めて入所費用を調べたりして、それに応じた貯蓄額を設定するんです」

 同じように、「病気に備えるために貯める」という目標を立てるなら、入院費用の目安や給付金のある保険の料金についても調べ、その額を目指して貯める必要があるのだとか。そうやって明確な目標に基づいて決めた貯蓄額を達成できれば、きっと漠然とした不安も解消できることでしょう。

 「このように数値化するなどで具体的にした目標を定め、そこから逆算していく考え方は大事です」

 こうした目標と手段を取り違えて考える人は、実は意外と多い様子。

 「医療に従事していると、血圧を下げることが目標という話はよく聞きます。でも、本来の目標は『病気にならないこと』で、そのための手段の一つが血圧を下げることのはず。プロ野球選手も同じで、素振りをしていたからプロになれるのではなく、明確なビジョンを描いた上で、その実現のために素振りをするからプロになれるのです。以前、ボディービルダーでもある芸人さんが、ギャグで『健康のためなら死んでもいい』なんて言っていましたが、知らず知らずのうちにそのような考えになりがちです。ですから、貯蓄を目標とするのではなく手段と捉え、何のために貯蓄するかを考えるとよいでしょう」

具体的な目標を設定すれば、不安の解消につながるはず (C)PIXTA
具体的な目標を設定すれば、不安の解消につながるはず (C)PIXTA

*第2回に続く

聞き手・文/石川由紀子 写真/PIXTA