同じ意見の仲間を探そう

 また意見を伝える際、その一歩を踏み出しにくいとき、どのようにするのが得策でしょうか。河野さんは、同じ意見を持つ仲間を探してみるのもおすすめだと言います。

 「自分だけの個人的な意見ではなく、何人かが同じことを感じている。その事実は『これは伝えるべきことなのだ』という根拠となって自分の背中を押してくれるはずですし、日ごろからの信頼関係があれば、伝えられた側としても素直に受け取りやすいと思いますよ」(河野さん)。

 ただし気を付けてほしいのは、仲間を探しているうちに周囲に知れ渡り、そのことを伝えるべき相手だけが何も知らない……という孤立した状況を無意識につくってしまうこと。相手への配慮のつもりでやったことであっても、結果的には疎外感を感じさせる可能性がありますから要注意です。

「一人ひとりの心遣いが、風通しの良いチームづくりの基本です」と話す河野さん
「一人ひとりの心遣いが、風通しの良いチームづくりの基本です」と話す河野さん

 その他、河野さんが実践している伝えるテクニックは「心のノック」。

 「相手のペースを尊重し、間合いをはかるために“心のノック”をしてから話しかけるんです」(河野さん)

 突然話し掛けられると相手はびっくりされますので、相手の様子を伺いながら、まずは相手の心の扉をノックしてみる。それだけで、相手はなんとなく人の気配を感じて、話を聞くための準備ができるのだと言います。心のノックだけで伝わらないと感じたときは、相手の視界に入ったり、自分の影が相手にかかるようにして近づいたりして、まずは自分の存在を認識してもらうこと。そうすれば「唐突に話しかけられた」という違和感がなく、話を受け取りやすくなるのだそうです。

 いずれもささやかなポイントのように思えますが、その効果は大きく、チームワークの向上に一役買ってくれるはず。あなたの職場でもぜひ、実践してみてくださいね。

文/西門和美 写真/稲垣純也