床に落ちた物はどう拾う?

 続いては、床に落ちたペンを拾うときの所作を教えていただきましょう。

 「ポイントは、かがむ際に腰を曲げないこと。片足を一歩後ろに引き、膝を曲げて腰を落とせば、背筋を伸ばしたまま姿勢を低くすることができます」(河野さん)。

 姿勢を低くすると同時に手を伸ばして拾うのではなく、姿勢を低くした後で手を伸ばして拾う。動作の一つひとつを切り分けて行うことも、品の良さにつながるのです。

急いでいるときなどは特に、腰をかがめながら手を伸ばしてしまう人が多い「拾う動作」。姿勢を意識して、一つずつの動作を丁寧に行うことで見た目の印象が大きく変わる
急いでいるときなどは特に、腰をかがめながら手を伸ばしてしまう人が多い「拾う動作」。姿勢を意識して、一つずつの動作を丁寧に行うことで見た目の印象が大きく変わる

磨きをかけるために、動画チェックで客観視

 いつでも、どこから見ても美しい身のこなしを極めているように見える河野さん。どのようにして、こうした所作を身に付けたのでしょうか。

 「もともとは私も猫背などの悩みがあり、所作には自信がありませんでした。そのような中で役に立ったのは、自分の所作を動画でチェックする方法です。気になるクセを客観的に見ることができれば、改善のための努力がしやすくなります」と河野さん。

 新人の頃にはビデオ撮りをして、自身の姿をチェックしながら所作を磨いたそうですが、今はスマホなどを活用する方法もおすすめとのこと。少し面倒にも思えるかもしれませんが、そうして改めて自分の所作を見直してみれば、思いがけない発見があり品格の向上につながりそうです。

 相手を思う気持ちを大切にし、一つひとつの所作を丁寧に行う。そうした心持ちで自身を客観的に見つめていれば、言葉や動作の一つひとつに品が宿るようになるのかもしれませんね。

文/西門和美 写真/稲垣純也