東京ミッドタウン(東京・港区)で、5月19日(土)と20日(日)に開催された「WOMAN EXPO TOKYO 2018」。多彩なテーマでお届けしたセッションの中から、20日(日)に実施された「元気な赤ちゃんを授かるために、いま出来ること『働く女性のための妊活セミナー』」の模様を前後編に分けてリポート! 前編は、横浜市の「よしかた産婦人科」の副院長・善方裕美さんが登壇した「基調講演」(セミナー前半)の様子をお届けします。

「よしかた産婦人科」の副院長・善方裕美さん
「よしかた産婦人科」の副院長・善方裕美さん

最初に「妊娠の仕組み」をおさらい

 会場の女性たちが真剣に善方さんの声に耳を傾ける中、まずは「妊娠の仕組み」についての話からスタート。卵巣から出る二つの女性ホルモン、「卵胞ホルモン/エストロゲン」と「黄体ホルモン/プロゲステロン」の役割などを詳しく説明しながら、「妊娠の仕組み」について解説してくれました。

【妊娠の仕組み】

(1)脳から「卵胞刺激ホルモン」が分泌

(2)卵胞が成長

(3)卵巣から「卵胞ホルモン/エストロゲン」(美容健康ホルモン)が分泌。子宮内膜を厚くする

(4)脳から「黄体化ホルモン」が分泌

(5)排卵:成長した卵子が卵巣から飛び出す

(6)卵巣から「黄体ホルモン/プロゲステロン」(妊娠サポートホルモン)が分泌。受精卵の着床準備

(7)受精:卵子と精子が卵管内で出合う

(8)着床:出合った受精卵が子宮内膜の上に到達

※卵子と精子が出合えず受精が成立しなければ子宮内膜がはがれ、経血とともに排出される(これが月経)

「卵子の老化」が日本の不妊の大きな原因

 「妊娠の仕組み」のおさらいの後は、あまり知られていない「生殖医療(不妊治療)の現実」についての話へ。不妊に悩むカップルはいまや6組に1組。体外受精で生まれている赤ちゃんは、20人に1人だといいます。

 「日本は、体外受精の実施件数は世界一。しかし、体外受精による出産率は低いというデータがあります。これはなぜだと思いますか? 実は日本では、不妊治療の開始年齢が遅く、高齢になってからの自分の卵子を使って体外受精をしているという現実があります。そのため、出産にまで至っている確率が低いのではないかといわれています」(善方さん)

 妊娠するチカラ(妊孕性/にんようせい)は、年齢とともに低下していきます。20~24歳の場合、4回の受精で1回も妊娠が成立しない人は5.7%ですが、40~44歳になると、4回の受精で1回も妊娠が成立しない人が64.5%に上るというデータがあるそうです。

 「不妊の三大原因は『排卵障害』『卵管のつまり』『精子の問題』とされていますが、実は『卵子の老化』も見逃せない課題。現在の不妊治療は、卵子の老化との闘いでもあります」(善方さん)

38歳を境に妊娠できる確率が減る

 では、卵子の老化はいつ頃から始まるのでしょうか。妊娠率・生産率・流産率のデータを分析していくと、どうやら38歳あたりが分岐点のよう。この頃を境に、不妊治療によって出産できる確率よりも、流産する確率のほうが上回ってくるのです。

 「卵子の数は、ママのおなかの中にいる胎児の頃が一番多く、生まれて成長していくにつれ、どんどん減っていきます。言うなれば、卵子は卵巣という宝石箱の中に保管された『宝物』というイメージ。毎日およそ30個の卵子が消えているのが現実なので、赤ちゃんを授かりたいと思う方は、できるだけ卵子がいい状態でいられるように保つことが大切です」(善方さん)

 不妊治療は、現状では保険適用外。助成金で補助されてはいますが、補助金にも年齢制限があるので、その点もしっかりと押さえておくことが重要だと善方さんは語ります。