とにかく現場で行動を

 ふたたびビジネスの話に戻します。深刻な現実を前にしてただ立ち止まっていても、何も始まりません。「ITふれあいカフェ」の事業も、常に動いて前に進みながら、地域の人と話し合い、取捨選択をしてきました。そんなトライ&エラーを繰り返すうちに、自分たちの思いが強固になり、次の展開へとつながっていくものです。

 実は株式会社たからのやまでは今、高齢者向けのアプリ開発への取り組みをスタートさせています。それもこれから、作ってみては不具合を見つけて改善するというトライ&エラーの連続になっていくでしょう。新しい試みに関係者みんなで熱い思いを注いでいますし、これからの展開を楽しみにもしています。

 たからのやまを設立してから、私は本当に日本全国を飛び回るようになりました。私がここで描いているのは、「日本全国のエネルギー総量を上げる」というイメージです。たからのやまの事業は、自治体を巻き込み、その地域のNPO職員を巻き込み、都会の起業家やエンジニア、地域の経営者や会社員を巻き込んで進んでいます。いろいろな立場の人で構成されたチームで、会社という枠を超えて同じ方向に向かっています。

 子どもから高齢者まで、そしてどこに住んでいようとも、「世界は変えられる」、あるいは少なくとも「自分自身は変われる」と信じられる人を一人でも全国に増やすことが使命だと感じています。それはチーム戦でこそ実現可能です。

 今の地域事業で接する地方の人々は、私たちが全力で想いを伝えると、手応えが大きく変わるのです。「東京だけが頑張ってもダメなんです」と声をかけると、目が輝き、全身に勇気をみなぎらせて、新しい仕組み作りに取り組んでいけるようになります。彼らは間違いなく、私たちチームとの出会いによって影響を受け、変わっていきました。

 自分の今の仕事を通して社会に新しい価値を創造する。実はいろんな立場の人がつながって、私たちのプロジェクトが動いています。起業家、会社員、自治体職員、インターン生……、置かれた立場によって創造性が変わるというわけではないのです。私たちの事業はそれを証明しています。

 自分の何がどこの社会に求められているかは、いつか必ずはっきりわかる。どんな立場の人でも社会から求められています。