情報発信をすることで、知恵を結集することができた

 ここで痛感したのは、やはりIT機器というのは、シリコンバレーを始めとする都市に住む人たちのために作られているのではないかということでした。誰もがペットを飼い、海外に行くのが当たり前の人たちにとっては、セキュリティロックの代わりになるごく身近で個人的ないい質問なのかもしれません。日本の地方に住むおじいちゃん、おばあちゃん、まして視野を広げて、発展途上国の人たちが使うことなど、想定されていないのではないかと思うのです。

 こういう現状には、ある種の怖さが潜んでいるように感じます。こうした機器を当たり前に使いこなす一部の限られた人のところにだけ情報が集まり、そこで称賛される人が脚光を浴び、仕事も全部その人たちの間でしか回らない。そこはそこで一つのコミュニティだし、おじいちゃん、おばあちゃんたちが住む日本の地方のコミュニティも厳然と存在していて、お互いに閉じた世界というわけです。

 このようなことを思い知った私たちは、80歳を過ぎた高齢者の誰もがタブレットを使えるようになるプログラムへとブラッシュアップするため、自分たちの失敗をじっくり検証しました。Web上でも困った点を発信し、意見を求めてみたところ、驚くほどの数のアドバイスがいろいろな人から寄せられました。私たちの情報発信が、多くの人の知恵を結集することへとダイレクトにつながったできごとでした。

 さらにはどちらのコミュニティも、自分だけでなく誰もが行き来できるようにしておきたい。そういう思いから、IT業界で最先端の事業に関わっている人たちを、株式会社たからのやまの現場である徳島にご案内するなどの活動も進めています。

<次回に続きます>

文/成田真理 写真/PIXTA


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