持ち味で考える「適材適所」の「材」

 話を単純化するために、10人のチームでただ穴を掘るだけの作業をしなければならないとします。その場合の「適材適所」の「材」とは、その人のスキルというよりは持ち味になると考えればいいのです。

 これから仕事を始めるというときに、「今日もまた仕事かよ」とマイナスなものの言い方をする人が必ず出てくる。そういう人の隣には、「さあ、今日も頑張るぞ」と張り切って仕事に入っていける人を配置する。それでも単純作業だから、途中でどうしても飽きてくる。一番に飽きてしまいそうな人の隣には、みんなの雰囲気を盛り上げるムードメーカーのような人を置く。これでみんなが仕事に集中できていいかと言うと、必ずしもそうではなく、仕事にあまり前のめりになっていると事故につながりやすい。そこで、コツコツ型で熱くなり過ぎないタイプの人が「そろそろ休みましょうよ」と、いい頃合いで声をかけてくれるとちょうどいい。こんな具合に、単純作業の中にも、それぞれの持ち味を生かして、仕事を円滑に進めるための配置があります。

 適材適所とは結局のところ、チームのメンバーみんなのモチベーションを、一つの仕事を成し遂げるためにどう集約していくかということなのです。みんなが新しいものを作り出すことに向けて気持ちを高揚させていて、勢いのあるときならそれはそう難しいことではありません。しかし、みんなが嫌がる仕事をとにかく片づけてしまわないといけないときだってあります。そういう場合にこそなおさら、適材適所の発想が大きな威力を発揮してくれます。