苦手な人とあなたとの共通点は?

 「1万粒のうちの3粒」は、私の生い立ちの中から生まれてきた発想だと思います。たとえ1万粒のうち9997粒は違っても、3粒は同じところがあるんだから、この人と何かできるのではないか。その発想を持つだけで、人間も人生も変わるのではないでしょうか。

 3粒とは、「猫が好き」「学生時代に音楽をやっていた」「食事がおいしい店の情報がいつも気になる」といった、直接仕事には関係のない他愛のないことで構わないのです。それがきっかけで会話が弾むようになり、「この仕事はこういうやり方で進めてみませんか」「あなたはこう言ったけれど、こういう方法もあると思います。いかがでしょうか」といったことも言いやすくなります。

 社会人になってからもこんな経験があります。20代の頃、苦手だった人と一緒に仕事をしていたときのこと。昼食を一緒に食べていて、その人が自分の娘の話をしたことがありました。私自身が両親の初めての娘ですから、その心情には理解できるところがたくさんあります。その人も、「うちの娘がね」という話をする間は、まったく素の笑顔になっていました。

 私は、苦手な人とわかり合うには、その人の笑顔の瞬間をどれだけ知っているのかが重要だと思います。苦手意識や嫌悪感があると、ついついその人の仏頂面ばかり思い浮かべてしまいがちですが、素の笑顔を脳内再生できるようにするだけで自分自身の気持ちがずいぶん変わってきます。一緒に仕事をする以上、その人をできるだけ好きにならなければやりにくいわけですから、それなら好きになる努力が必要です。

 ただし、無理して装った3粒で相手の笑顔を引き出そうとしても、かえって逆効果。俗に「風見鶏」とか「腰ぎんちゃく」と呼ばれている人が失敗するのは、そこです。その場その場で、相手の言うことに合わせて心にもないことを言っても、それは共通点にはなり得ません。相手にも周りの人にも、すぐに見透かされてしまいます。自分と相手との間で本当に重なっている3粒を見極めることが大切です。

<次回に続きます>

文/成田真理 写真/PIXTA

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