名前の見えない仕事で求められる=黒幕

 私は25年ほど、イベントをプロデュースする仕事をしてきて、裏方、つまり黒子に徹してきたと思っていました。ところが、ITの黎明期からIT業界のイベントを数々手掛けてきたおかげで、いつの間にかこの業界の大きなイベントには必ず関わるようになっていたのです。そうなると、表に私の名前が出ることはなくても、IT業界の主な人たちには名前を知ってもらったり、つながりができていったりします。「ああ、あのイベントはまた奥田さんが担当しているんだね」といった具合に。

 それだけなら業界の人だけが知っている黒子に留まっていたと思うのですが、SNSによるコミュニケーションが発達してきたことで、たまたま業界以外でも多くの人の目に触れる場で、私の名前が出るようになりました。そして、登壇者選出に関わったり、講演者の会社の状況などをアドバイスするようになっていったのです。もしどこかで「ITイベントの黒幕」などと呼ばれているとすれば、そうしたいくつかの事情が重なったことが原因です(ただ、黒幕という言葉には、若干悪役っぽいイメージが含まれるので、自分から使うことはないですが……)。

 この例を出して何が言いたかったのかというと、表舞台に立たなければ観客は誰も知らないはずの黒子も、だんだん多くの人に必要とされるようになり、黒幕と呼ばれる存在に変わっていくということです。大事なのは、どれだけたくさんの人に必要とされる存在になるかです。