iDeCoの2大メリットと注意点

  iDeCoのいいところは税制的な優遇があることです。

メリット1:税金が安くなる

 まず、支払った掛け金が「全額」所得控除の対象となります。例えば、企業年金のない会社員の人が掛金の上限である年間27万6000円を支払うと、その年の所得から27万6000円を差し引くことができるので、課税所得が減ります。その結果、その年の所得税や翌年の住民税が安くなる効果があります。

 例えば、iDeCoに加入して、毎月1万円の掛金を支払うと年間で支払う掛け金の合計額は12万円になります。この12万円はその年の所得から全額差し引けるので、仮に所得税率が10%の人なら、住民税(10%)と合わせると、税金が2万4000円安くなります。これは1年あたりの効果なので、加入年数に応じた節税効果が得られます。

【節税額のシミュレーション(概算)】
Aさん(30歳、課税所得300万円、掛け金1万2000円/月)
60歳まで掛金を積み立てた場合
所得控除による節税額(所得税+住民税)の累計:約86万4000円
※所得税と住民税の課税所得は毎年同額として 簡便的に試算したもの。住宅ローン控除等は利用していないものとする

 逆にいうと、そもそも所得のない人は所得控除の恩恵はありませんし、すでに所得控除や税額控除(住宅ローン控除など)が大きく、所得税をあまり払っていない人も恩恵は限定的です。

 会社員や公務員の方は年末調整のときに、秋に送付される「掛金払込証明書」を会社の担当部署に提出すると年末調整で払いすぎた所得税が還付されますし、翌年の住民税が安くなります。もちろん、自分で確定申告しても構いません(掛け金を銀行口座からの振り替えにしている場合。給与天引きの場合は必要ない)。ここで大事なのは還付された所得税や安くなった住民税を使ってしまわないこと。戻ってきたお金を貯蓄や投資に充てるしくみをきちんとつくることです。

メリット2:運用利益も非課税なので長期運用しやすい

 次に、運用中、利益にかかる税金も非課税です(※3)。例えば、投資信託を解約して利益が出ると、課税口座では利益に対して約20%の税金がかかります。それに対して、iDeCoの口座だと、税金が引かれずに「元本 + 利益」をそのまま再投資できるので、長期で資産をふやすのに有利に働きます。せっかく非課税、しかも長期で運用する口座なので、少しリスクを取って投資信託で運用してはどうでしょうか。

※3:特別法人税(運用資産に対して年率1.173%が課税される特別法人税は2020年3月末まで課税が凍結されている。過去には課税停止の延長措置を繰り返しているが、今後の動向には注意を払う必要がある。

注意点:受け取るときは一括課税/60歳まで引き出せない

 運用してきたお金を受け取るときは非課税ではなく、原則、一括して課税されます(税の繰り延べといいます)。ただし、例えば、一時金で受け取るときには「退職所得控除」が適用されて一定の金額を差し引くことができまるので、非課税で受け取れる人もいる、ということです。自営業や企業年金のない会社員の人はそれほど気にしなくてもよいですが、退職一時金が多い人や勤務先に企業年金がある人は、受け取る前に、受け取る順番や方法などをきちんと検討しましょう。

 そして、原則、60歳になるまで引き出せない点は注意。あくまでもリタイアに向けて資金を準備していく制度なので、掛け金は無理のない範囲で設定してください。