毎朝、出勤する社員が真っ先に行うこと…それはなんと、「ダーツ」での席決めだった! 日本を代表するスナック菓子メーカーのカルビーは、2010年の本社移転に伴いオフィス改革を実施。フリーアドレス制を全面導入し、座席をダーツで決めるという驚きのシステムを採用しました。オフィス改革のプロジェクトメンバーを務めた経営企画・IR本部の石井信江さんに、ユニークなシステム導入の裏側をお聞きします!

オフィスを書類置き場にしない

――2010年に本社を赤羽から丸の内に移転する前は、どういったオフィス環境だったのでしょうか?

 ごく一般的なオフィスで、部署ごとにフロアが分かれていました。赤羽本社と八重洲オフィスの他、事業所も各所に分散していましたので、コミュニケーションが取りづらかったと言えばそうとも言えますが、当時はそれが当たり前だったので、そこまで不便だとは思っていなかったんです。

経営企画・IR本部 石井信江さん
経営企画・IR本部 石井信江さん

――では、フリーアドレスを導入されたきっかけは?

 2010年の本社移転の前の2007年に、八重洲オフィスを1フロアから2フロアに増床しまして、その際に「働き方改革」も一緒にやろうということで弊社では初めてフリーアドレスを導入しました。

 でも、結局フタを開けてみたら毎日同じような席に座ってしまう人が多くて、固定席とさほど変わらない状態になってしまったんです。部署ごとならまだしも、あるエリアには仲が良い人たちが固まって雑談ばかりしている…といったフリーアドレスの課題も徐々に顕在化してきました。テーブルは3人掛けでしたが、真ん中は窮屈でイヤだとか、そうした不満も上がっていましたね。

――フリーアドレスにデメリットを感じていたにも関わらず、移転時に全面導入に踏み切った理由を教えてください。

 まず、前提として、赤羽本社と八重洲オフィス、その他分散していた関係会社を統合するというのが最大のミッションでした。その上で会長の松本(松本晃氏)からは、次のようなお題をもらっていたんです。「そもそも人というのは横に動く動物で、縦には動かない。フラットな環境でこそコミュニケーションが取れる。だから、まずそれを実現しよう」と。そのためには、絶対にオフィスに仕切りを作ってはいけない、会長室や社長室も不要だと言われました。

 さらに、「オフィスというのは知恵を生みだす場所なので、ゴミ箱にしてはいけない」とも言われましたね。書類を積み重ねたところで1円も生みださないのだから、机の上やオフィス内を単なる書類置き場のような場所にしてはいけない、と。

――耳が痛いですね…。確かに一般的な固定席ではどうしても個人の机に荷物が山積してしまいますね。

 そうなんです。「人を横に動かす」「知恵を生みだす」「書類のゴミ箱にしない」、そうしたオフィス環境を突き詰めていくと、やはり従来の部署単位の島型ではなく、フリーアドレスにするべきだという結論に至りました。ですが、八重洲オフィスのようにいつのまにか席を固定化させないためにも、座る席はダーツシステムを使って自動決定される方式を導入したんです。