「私がいなくても成長できる会社にしなければ」

 商品と社員に愛情を感じているからこそ、私がいなくても成長できる会社にしなければという思いが強いんです。社員が何千人もいるような大企業ではなく、30人という小さな組織だからこそ、同じ船のクルーのように、どんな波が来ても同じ方向を見て乗り越えられる強さを持たないと生き残れない。そんな切実な思いから生まれているのが「ストレスオフ組織」というビジョンなんですね。

――「ストレスオフ」という言葉の響きからふんわりと緩やかな印象がありましたが、むしろ強くなるための手段であるということですね。

 はい。言い換えるなら、「ストレスマネジメント」という言葉になると思います。「ファミラブ」(※)の各制度も、社員が自身の心身の健康や家族との関係性を充実させるためのきっかけを提供するためのものです。当初は、大型連休に休みを追加できる「ファミラブ休暇」だけでしたが、オサトウが…あ、これは佐藤の“社内ニックネーム”ですが、オフシーズンに有休をまとめて取って家族との時間に充てている事例を見て「なるほど。連休を延ばすだけが能じゃないのね」と導入を決めたんです。

※ファミラブ制度:家族(ファミリー)や自分自身(ミー)とじっくり向き合うための時間や機会を提供するメディプラスの制度。前編参照

――今おっしゃった“社内ニックネーム”というのもストレスオフの取り組みの一環でしょうか?

 そうですね。女性が多い職場なので、女性にとって「働きがい」につながる要素は何なのか、リサーチをしたことがあるんです。そこで分かったのは「つながり」の実感が非常に重要であること。「私の居場所はここにある」と思える環境づくりです。

 もともと当社は、創業期には私の友人を集めてスタートしたくらいのフレンドリーな環境ではありましたが、会社が大きくなるにつれて「つながり」を戦略的につくっていく必要を感じていました。そこで、社員一人ひとりにニックネームを付けたり、全員の似顔絵を作って、社員手帳や会報誌に掲載したりと工夫しています。

社員一人ひとりの似顔絵がオリジナルの社員手帳に掲載されている
社員一人ひとりの似顔絵がオリジナルの社員手帳に掲載されている

 部署を超えた横軸の関係をつくる「クラス制度」も、多様な価値観に触れて複数の居場所を提供するのが狙いです。部署にはそれぞれに役割がありますが、クラスではシンプルに「お客様のことを考える」というテーマで活動してもらっています。

ストレスオフには、セルフコントロールが重要

――3月と10月に1週間ずつ、会議もやめて有休を取りやすい期間をつくるという「ファミラブWEEK」については、どれくらい活用が進んでいるのでしょうか?

 昨年10月の実施状況を調べてみたところ、有休を取得できた人が4割、「家族との時間を持てた」という人が3割いた他、「仕事に集中できた」という人が2割いました。

 この期間は会議もなく、パートナー企業にもあらかじめ休暇取得が多いことを伝えてあるので、たまっていたデスクワークや探求したい仕事に集中できるというメリットもあるんです。この期間にあえて休まず、いつもより静かなオフィスで、先送りにしていた仕事に注力する社員もいます。そういったセルフコントロールがストレスオフにつながると思います