母親を呼び出して、第三者を交えて話し合い

 ここは、やっぱり美沙子さんのお母さんと直接対決するしかありません。美沙子さんにお母さんを呼び出してもらうことに。美沙子さんが、「有名なファイナンシャルプランナーにただで会えるよ。お金が増えるかもしれない」と提案すると、母親はわざわざ実家から都内まで出てきました。ここはミーハーな上にお金が大好きな母親のことを知り尽くした美沙子さんのテクニックがさえていますね。

 そして、運命の面会当日。

 美沙子さんとFPである私、さらに……弁護士が登場! 美沙子さんを支配していたお母さん、ここにきて委縮しまくりです。そう、お母さんは娘には強気でしたが、客観的な意見を持った第三者には弱かったのです。圧倒されたお母さん、そこに弁護士がぐいぐいと迫ります。

 「月25万円も仕送りしたら娘さんの手元には15万円~20万円しか残らない。それでは東京で一人暮らしをする場合、余裕がありませんよね?」
 「そうですね……」
 「ですよね? 仕送りを減らしましょう」
 「はい……」

 さらに弁護士は、一般的な仕送りの金額や親子でもお金問題で裁判沙汰になるケースがあるといった話を伝えました。そしてFPの私が、このまま仕送りを続けた場合のシミュレーション資料などを示しながら、美沙子さんの生活状況を説明しました。客観的な事例やデータを示した結果、話し合いの最後には、仕送り額は9万円台にまで下がりました。

 その上、弁護士に誓約書を作成してもらい、月々の取り決めを書面にして残すことができました。母親はしょんぼりしていましたが、美沙子さんが罪悪感を覚える必要はもうありません。お互い合意の上で交わした誓約書があるのですから。

 その後は、むちゃなお願い事もありますが、その都度「また先生たちに相談するよ」と言うと母親も引き下がるように。以前よりも美紗子さんは、母親に意見を言えるようになり、付き合いやすくなったそうです。そして、美沙子さんは仕送りが減った分を貯蓄に回すことができました。まずは定期預金での貯蓄を増やすとともに、老後は一人で暮らしていくと決めている美沙子さんは、積み立て投資を開始。老後に向けた貯蓄に心を燃やしています。

 実は、美沙子さんのように、親との関係で苦しみ、マネー相談に訪れる人は少なくないのです。傾向としては、相談する身内のいない一人っ子や、両親とも頼りにならない人であるケースが多いです。年収が500万円で月10万円の仕送り、といったケースもあります。これで都内に住んでいる女性の場合は、生活が苦しく感じるかもしれません。

 専門家に頼ることで、道が開けることもあります。今回は弁護士も出てきましたが、救いの道はさまざまあるのです。弁護士やファイナンシャルプランナー、カウンセラーや行政機関など、自分以外の人に相談してみることで、自分の悩みの対処法がいくつもあることに気付くでしょう。

 「つらいけれど心の内を吐き出す場がない……」と悩んでいるなら、一歩踏み出してみてください。そんな悩みを受け止めるために、専門家がいるのですから。

今回の学び

今回の学び「外部に助けを求めよう」
今回の学び「外部に助けを求めよう」

聞き手・文/相馬留美 イラスト/北村みなみ