新たなジャンルを開拓! 1年かけてキャリアを立て直す

 私は、奈々さんに聞きました。
 「どうしても女性誌じゃないとダメなの?」

 質問にキョトンとした奈々さん。
 「いえ、そんなことはないですけど、他の分野の仕事はやったことないですし……」
 「じゃあ今までのスキルが生かせるか生かせないかも分からないよね?」
 「確かに……」

 今まで奈々さんは、仕事にめぐまれていたため、特に売り込む必要もなく、それ以外の分野の仕事に興味を持つことがなかったのです。ここで奈々さんは一念発起! 当面の生活費を確保しつつ、自分のキャリアアップのために投資することに決めました。

 まず、もともと勉強が得意な彼女は、この時お金のことに苦労した経験から、まずマネーや金融の勉強を開始。ファイナンシャルプランナーの資格を取り、マネー系の企画にも対応できるよう知識を磨きました。

 ファイナンシャルプランナーの勉強と並行して、通い出したのが「占いの学校」。奈々さんが女性誌の編集をしていた時に知ったことだったそうなのですが、一番読まれていたのは実は占いのページ。そのため、前から占いに興味を持っていたのだそう。学費は20万円でしたが、これは貴重な投資。プロからの指導を受け、新しい技術を得ることができました。

 女性誌にいた彼女が、発注先から仕事を突然切られた時に一番ショックだったのが「35歳以上だから」と年齢で存在を否定されたことだったと、奈々さんは当時を振り返ります。「仕事もなくなり、今さら結婚もできないと思うし、細々と生きていくのかなあ……って絶望していたんです」

 ですが、何もかも失ったからこそ、新しい世界に飛び込んでいく勇気が湧いたわけです。

 そうして、1年ほどの自分磨きの期間を経て、少しずつ事態は好転。大手出版社の仕事が増えたわけではなく、自分で営業したことや、新しい分野の開拓が功を奏し、今まであまり声の掛からなかった中堅の出版社からいくつか声が掛かるようになり始めました。

 あれから3年、当時開拓した中堅出版社を中心に、今では男性誌で占いの連載コーナーを持つほどに活躍している奈々さん。収入は大手にいた時と同じく、年収700万円にまで引き上げることができました。加えて、月々のお金の貯め方も大きく改善。以前は銀行の普通預金に、ただお金を預けておいただけでしたが、フリーランスにはフリーランスに合った貯蓄のやり方があるとアドバイスしました。

 まず、フリーランスは厚生年金に加入していないため、年金額が少なくなります。その対策のため、iDeCoに加入して、自分の老後のセーフティーネットを作ることに。掛け金は月5万円に設定しました。次に、個人事業主などが加入できる小規模企業共済に加入しました。これは、加入者が廃業したり、65歳になったりしたときなどに、退職金代わりに貯めたお金を共済金として受け取ることができる制度で、退職金のないフリーランスなら入っていると安心です。こちらの掛け金は月2~3万円としました。これで年間100万円ほど貯めることができますね。

 そして、節税です。奈々さんは今まで税金の知識があまりなかったため、ここも勉強して、できる限りのことをやるようになりました。例えば先ほどお話ししたiDeCoや小規模企業共済も、掛け金の額に応じた所得控除があるため、課税所得が下がり、節税のメリットがあります。会社員の場合、自動的に「給与所得控除」という形で、必要経費分の金額が控除されますが、フリーランスは自分で経費をきちんと計算し、確定申告しなければいけません。奈々さんは経費として出すべきものも計上していないことも多かったため、ここをきっちりやるようにしました。

 奈々さんの当面の目標は、収入が安定してきたら、iDeCoは月額6万8000円、小規模企業共済は月7万円まで掛け金を上げること。どちらも掛け金のMAXの金額なのですが、頑張り屋の奈々さんならきっと達成できることでしょう。

 そして、カリスマ占い師として、想像もしなかった活躍をする日も近い!?

今回の学び

今回の学び「ピンチはチャンス!」
今回の学び「ピンチはチャンス!」

聞き手・文/相馬留美 イラスト/北村みなみ