彼氏の本心に幻滅して自分自身の幸せを見つける
なんと彼氏は家計の見直しの相談ではなく、はるかさんにライブができるような家を建ててもらい、ライブハウスの貸し出しで収入を得たいから、私にその相談をしたくてここに来た、と言い出したのです。
「俺、自分に合った仕事をじっくり選びたい派なんで。焦って就職したくないんですよね。だからその間は、はるかに養ってもらいたいんですけど、家計が苦しいって言われて。で、調べてみたら、不動産投資して、働かなくても不労所得が得られるようにしたほうがいいって分かったんですよ! これで俺たち一生幸せになれるんです!」
……なんと! 事実上の「生涯ヒモ宣言」が飛び出しました! 私も驚きましたが、はるかさんもまた凍ったように固まっていました。彼女も初耳だったようです。それから彼氏はとうとうと、大真面目に、「二人の未来のため」の不動産投資プランを語りました。だましているとか、たかっている気は毛頭なさそうで、そのことが余計に闇の深さを感じさせました。
はるかさんは、そこで一言、ぽつりとつぶやきました。
「……私のこと、当てにしてるよね」
そこにあったのは、完全に恋の終わりを感じさせる、能面のようなはるかさんの顔でした。はるかさんは彼の本心を聞いたことで目が覚め、しばらく距離を置いた後、彼氏とお別れしたそうです。
彼氏と別れてから、当然ながら、はるかさんのマネー事情は好転。買い物は自分の分だけになり、一緒に行く人がいなくなったためか、金額も月5万円にまで減りました。また、お金を持っているとうっかり使ってしまうこともあるので、給料が出たら先取り貯金として定期預金を月7万円行うことにしました。
ところで、彼女のストレスの原因は仕事でしたよね。こちらのその後についてもお話ししましょう。
初めての相談から3年後、彼女は同じガン病棟で働いていました。終末医療に心からやりがいを感じ、かつてはつらかった患者の死に対しても、自分なりに向き合い方を会得し、ストレスは軽減されたようです。また、マネー相談に来た時、自分が買い物依存症になっていたこと、また、彼氏に依存されつつ、そんな彼氏に自分も依存する「共依存」関係であったことに気付いたことで、人間の心理に興味を持ったはるかさん。あれから心理カウンセリングの勉強をし始め、資格を取ることも視野に入れているそう。
余談ですが、はるかさんはその後、合コンで彼氏を見つけたそう。「会社員の彼氏です! ちゃんと働いている男性です!」と、うれしそうに報告してくれました(笑)。
彼氏の「生涯ヒモ宣言」が人生を好転させるとは、まさに「災い転じて福となす」です。実際、私が相談を受けたケースで、お金の悩みのもとが、心に由来していたことは少なくありません。もしあなたが、「あれ? 私のお金の使い方、ちょっと変?」と感じたら、第三者的な誰かに、心の悩みを打ち明けてみるのもよいかもしれませんね。
<今回の学び>
聞き手・文/相馬留美 イラスト/北村みなみ
◆変更履歴:記事本文を一部修正しました(2018年5月18日)