「お腹いっぱい」が続くと見えてくる、本当の自分

 でもそれって正しいのでしょうか。

 私自身が作る料理はいたってシンプルで素材重視なものが多いのですが、子どものころは、もっと凝った料理を作っていました。無類の食いしん坊で、新しいメニューを作ったりアレンジしたりするのが大好きでした。

 ある夜、試験勉強をしていて、「ミートパスタが食べたい!」と無性に思ったことがありました。そう思うと「トマトを減らして最初から粉チーズを混ぜてみようかな」「豆腐を刻んでひき肉に合わせてみたら?」などアイデアが浮かんできて、試したくて、食べたくて我慢ができなくなるのです。コソコソとキッチンへ行って、玉ねぎを洗って飴色に炒めるところから始めます。パスタも手打ちで発酵させたり、パスタの種類によって食感や調理法の違いを研究してみたり……。

 ようやく出来上がったら、さっそく食べてお腹いっぱいになって満足する生活。ですので、あのころは24時間、お腹は幸せな状況だったように記憶しています。

 でも、そんなムチャなことを続けていくうち、ふと「自分がかわいそうかな」と思うようになりました。

 「目は食べたいし、脳も食べたいけど、もしかしたらお腹は食べたくないのかもしれない」と感じ始めたのです。だって、夜中に食べてしまったら、たとえ体は休めていても、体の中は夜の間中、働かなければならなくなります。

 必要以上にお腹に負荷をかけることは、すごく「モッタイナイ」ことで、不親切な行為だと感じました。世の中には食べたくても食べられずに苦しむ人々が大勢いるのに、食べられる環境を大切に思えないって、人にも自分にも優しくないなと思うのです。