オレンジジュースの心理的な影響を実験

 果汁を飲む習慣がある人ほど、自分の仕事の生産性の高さを感じている人が多いという意識調査の結果には、どのような背景があるのでしょうか。医学博士で杏林大学名誉教授の古賀良彦さんが、「果汁が生産性に関わる心理や脳機能にどのような変化をもたらすのか」をテーマに実験を行いました。

 実験では、100%果汁(オレンジジュース)を摂取した際の酸味、おいしさ、香りなどの体感と脳機能の変化を、成人男女6人と、中学生男女5人を対象に測定しました。

【実験概要】
◎実験実施・監修:古賀良彦さん(医学博士・杏林大学名誉教授・医学部精神神経科学教室教授・NPO法人日本ブレインヘルス協会理事長)
◎方向性:100%果汁(オレンジジュース)を摂取した際の酸味、おいしさ、香りなどの体感と脳機能の変化を測定
◎試料:(1)オレンジジュース、(2)水 ※各試料は約17度、200mlを透明ガラスコップに入れて提供
◎調査対象:健康な成人男女(27歳~43歳)6人(男性3人、女性3人)、健康な中学生男女(12歳~15歳)5人(男性3人、女性2人) ※右手利き、非喫煙者、検証試験の2時間前以降は水以外の飲食禁止

 「活力に満ちて前向きに楽しく仕事と向き合い、疲れが少ない状態が保てることが仕事における“生産性の向上につながる”」という仮説のもと、まずは心理面で実証実験を実施。水と比較して、オレンジジュースの飲用後はポジティブな心理指標が多くの部分で高く見られると判明しました。

 まず、オレンジジュース飲用前後での心理状態を測ったところ、オレンジジュースを飲んだ後は、水と比べて、総合的気分状態(TMD)が良い傾向にあると分かりました。

 飲用前後における気分の変化を「リラックス」「楽しい」など8つの項目で観察したところ、「元気」「心地よい」の項目を中心に、オレンジジュースを飲んだ後のほうが、水よりも気持ちの変化が大きいと判明しました。

脳の働きによる影響は?

 オレンジジュース飲用後の心理的変化の背景に脳の働きがどのように関わっているのかについても、実験が行われました。前頭葉16部位の脳血流を測定したところ、オレンジジュースを飲用した後のほうが、水よりも素早く血流量が上がっていました。

 脳血流量の変化を16部位それぞれで比較すると、14カ所でオレンジジュースのほうが高くなっていました。総血流量もオレンジジュースのほうが上がっており、脳が活発に機能していると分かりました。

 実験を行った古賀さんは「血流を測定した前頭葉は、集中力、記憶力、企画力と関わりがある部位です。その部分の血流量が高まった、つまり活性化したということは、まさに生産性に関わる部分に影響を与えると考えられます」とコメントしています。

味覚が与える影響も

 また、脳機能の活発化に味覚が与えている影響を調べるため、オレンジジュースと水それぞれに対する心理評価も調査。味覚や香りについては、ほとんどの人がオレンジジュースを高く評価する結果となりました。味に対する評価では、「おいしい」「もっと飲みたい」と感じる人の数がオレンジジュースで多く、心理的に良い影響を与えている可能性が示唆されたとのことです。

 古賀さんはこの結果と本実験について、「このような『おいしい』という評価が、心理と脳血流の変化にも影響を与えたと考えられます。これらの結果から、朝、オレンジジュースを飲むと、前頭葉の血流を増加させるとともに心理的な変化ももたらし、仕事の生産性をアップさせるのにプラスの効果があるといえるでしょう」と語っています。

文/飯田樹 イメージ写真/PIXTA