自分の頭と相手の頭に同じイメージをつくる方法

 バラエティー番組や通販番組などでトークを求められるとき、僕はうまく言おうとは意識していません。それよりも常に頭にあるのは、伝える情報一つ一つの「イメージ」なんです。

 例えば、通販番組で掃除機を紹介する場合はこうです。

 「ゴム素材でできた、伸びて曲がるこの『隙間ノズル』が、すごいんです! ベッドと壁の細かい隙間、車のシートとシートの間など、通常の掃除機のヘッドでは入らないところもすいすい入れて便利!」などと説明しながら、自分も頭の中で、ベッドと壁の細かい隙間や、車のシートとシートの間を掃除しています。

 聞いている人にとって、言葉の羅列だけではサーッと流れてしまいます。受け止めてはもらえないから、自分の頭の中に映像を思い浮かべながら、それを適切だと思う言葉に変換しています。すると、自然と手が動くぐらい、気持ちもこもります。より、相手に伝わりやすくなるのです。

今、頭の中には、具体的なイメージが描かれています (C)PIXTA
今、頭の中には、具体的なイメージが描かれています (C)PIXTA

 また、自分が明確にイメージして伝えることと同時に、自分と同じ速度で聞く相手も同じイメージを頭の中につくってもらうことを意識するのが大事です。

 その基本を最も学べるのは、意外かもしれませんが、実は「怪談」です。

怪談から学べる、話すコツ

 怪談話や都市伝説を僕が得意としているから言っているというわけではありません。落語家の世界でも、弟子が入ったら「まず怪談を教える」人もいるほど。怪談には、話をする「間」や「抑揚」など、人に話を聞いてもらう際に必要な技術がすべて入っていて、怪談を習得すれば一通りのテクニックが身に付くともいわれているんです。

 僕が意識している怪談での話すコツ、名付けて、「島田の怪談四カ条」。そのままのストレートなネーミングですけれど(笑)……せんえつながら、ご説明しましょう。

其の一、「入りは小さく」

 話を始めるときの第一声は、「小さく入る」がいい。

 これは、怪談に限らず言えることで、いきなり「(大きな声で)ちょっと聞いてくださいよ!」と始めると、相手は身構えてしまいます。そこで「(小声で)……この話は3年前のことでして……」と小さい声で始めると、相手が聞き耳を立ててくれ、聞く側の集中力がぐっと増します。

 大勢の芸人が集う演芸ライブを注意して見ると、ベテランの漫才師たちは、若手がたくさん出てバーッと元気にやっている中で、あえて小さい声で話をしています。その瞬間、お客さんは聞き耳を立てるように、自然と話に引き込まれます。

其の二、「状況描写をできるだけ細かく」

 日時、場所を具体的にすることで、話の信ぴょう性が増します。

 例えば、

 「今から数年前に、関東のT県にあるAという高校で起きた事件なんだけど……。そこにTくんとSくんという二人の男子がいて……」

と話すよりも、

 「昨年の8月31日に実際にあった話で、栃木県筑波大付属高校の3年2組で起きた事件なんですが……。仮名にしますが、そこに田中くん、斎藤くんというバスケ部の親友同士の男の子がいたんですよ」

と話す。どうですか? 一気にリアリティーが増しませんか。(注……例え話は完全なフィクションです)

 作り話の場合でも、日時、場所を具体的にします。名前もイニシャルより、実在する名字や名前を仮名として使うほうが伝わる。この「状況描写をできるだけ細かく」は、普段みなさんが会話している、たわいない話でも同じです。

 僕は話をするときは、相手の表情や反応も、よく見ていますね。聞いている人の頭の中を想像し、一緒にイメージをつくっていくようにしています。相手の顔や表情を見て、「あ、今、(しゃべりが)走り過ぎているな」「ついてきてもらえていないな」と思えば速度調整もしています。