たかが750円? されど750円?

 先ほどの例では、医療費控除の確定申告をしても、還付を受けることができるのは、所得税の750円でした。もしかしたら、「たったこれだけ?」と思うかもしれません。

 でも実は、確定申告した情報は、市区町村が住民税を計算するときの情報にも活用されます。そのため、確定申告をすると、自動的に住民税にも医療費控除が適用されるのです。

 住民税率は、所得税と違って一律10%です。そのため、医療費控除の金額が所得税と同じ1万5000円でも、1万5000円×10%=1500円となり、納めるはずだった住民税から1500円が減額されるのです。

 所得税だけを見ると750円という金額ですが、住民税も合わせると、両方で税金が2250円安くなるわけですね。

 この仕組みが分かっていれば、年収約311万円未満の人が確定申告をすることで安くなる所得税と住民税の合計額は、医療費控除の金額×15%分という計算式で、事前に計算できます。

 それが分かれば、慣れない確定申告を頑張って「たったこれだけ?」というがっかり感なく冷静に心積もりができますし、人によっては、「こんなにたくさんの領収書を整理して、2時間も3時間もかけて頑張るのなら、その分ランチを節約したほうがマシ!」と思う人もいるかもしれません。

学ぶことで心強い知恵を持てる

 税金について学ぶことは、「確定申告をすると税金が安くなることを分かった上で、時間や労力と税金の軽減を天秤にかけて、自分で確定申告をする、しないという行動を選択できる」ことにもつながるのです。

知っているだけで心強いのがお金の知識 (C) PIXTA
知っているだけで心強いのがお金の知識 (C) PIXTA

 なお、いくら給与収入311万円未満といっても、もともと税金を納めていない人には、いくら頑張っても還付も減税もありませんよ(苦笑)。

 今年からは、さらに新しい医療費控除「セルフメディケーション税制」もできたので、より医療費控除が身近になります。制度を正しく知ることで、自分にとってベストな結果を選択できるようになりましょう!

文/前野彩 写真/PIXTA

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