保険に入ると損か、得か

 最後に、③損か、得か。

 本来、保険は頻繁に起こることではないけれど、起こってしまったら、自分の貯蓄ではやりくりできないことに対して備えるものです。そのため、保険料を払ったけれど、平穏で保険金をもらうことがなければ、それが一番良いことです。

 海外旅行傷害保険や自動車保険、火災保険などはその典型ですね。

 例えば、海外旅行傷害保険は、海外旅行中に急病になると、数十万円から1000万円以上の費用がかかるために、掛け捨て覚悟で保険料を払って安心を買うわけです。もしもの事態に備えて加入しているわけですから、「元気に海外旅行から帰ってきて、何ももらえなかったから損した!」と考える人は少ないでしょう。

 でも、これが入院保険となると、意識が変わるようです。

 「入院してお金をもらって得をした」という経験談も聞きますが、給付金を受け取るためには、それなりの保険料を支払っていることを忘れていませんか。

 例えば、医療保険の保険料が毎月3000円だとしましょう。30年間の総支払保険料は、108万円です。この時、入院して受け取るのが日額5000円だとすると、単純計算で216日入院して、ようやく支払った保険料と同額になるわけです。保険料を払って、もしもの安心を買うわけですが、216日も入院しないと思うなら、貯蓄でもしもの入院に備えたほうが得かもしれません。

 将来のことが不安になると、「もしものときのために」、「何かあったときのために」と、民間保険を考えてしまうことが多いようですが、まずは、

1.必要か、不要か
2.不安か、安心か
3.損か、得か

 を考えるようにしてくださいね。

 次回は、「必要か、不要か」の判断材料になる遺族年金についてお伝えしますので、お楽しみに。

文/前野彩 写真/PIXTA