この質問は、私が講師を務めるセミナーでよくするのですが、一番多く手が挙がるのが、どの会場でも共通していて、(3)の7割です。

 でも、残念ながら7割ではありません。正解は、(2)の8割。年収400万円では「手取り年収は税込年収の8割」が目安なのです。

 例えば、税込年収300万円の人なら、8割の240万円が手取り収入、年収400万円の人なら8割の320万円が手取り収入になります。

手取り収入は約8割はなぜ?

 手取り収入約8割の根拠は、年収から納める社会保険と税金です。

 差し引かれる金額が分かれば、手取り金額は分かりますよね。社会保険料の年収に対する個人負担の割合は、次のように決まっています。

【給料から天引きされるもの】

<社会保険料の本人負担分>
※収入に対して計算
・厚生年金保険料……9.15%
・健康保険料……4.955%
・雇用保険料……0.3%
・40歳以上の人は介護保険料……0.825%
 ※健康保険料は都道府県によって異なる。上記は東京都の例
<税金>
※課税所得に対して計算
・所得税……5~45%
・住民税……10%

 40歳未満の人は介護保険料が不要なため、収入の約14.405%が社会保険料となり、40歳になると、介護保険料を納めるようになるため、15.23%です。

 実際の社会保険料は、原則として4~6月の給料等の平均額である「標準報酬月額」やボーナスの「標準賞与額」に応じて納めるのですが、ざっくり計算するときは「年収の約15%が社会保険料」と考えておきましょう。

 あなたが1年間に納めた社会保険料は、源泉徴収票の(12)に載っていますよ。

 そして、もう一つは税金です。

 税金は、所得税と住民税があり、所得税の税率は「課税所得」の5~45%、住民税率は10%です。

 ここで聞きなれない言葉が「課税所得」でしょう。

 課税所得と収入は、異なります。

 給与収入から「給与所得控除」という会社員の必要経費に当たるものを差し引き、さらに、1年間に納めた先ほどの社会保険料や生命保険料控除、扶養親族などの個人の事情に関する「所得控除」を差し引いた部分が「課税所得」です。つまり、年収に対して、5%や10%の税金がかかるわけではないのです。

 一般的な収入であれば所得税率は5%~10%の人がほとんどです。そこで決まる税金と社会保険料を年収から差し引くと、だいたい手取り年収は8割になるのです。

 なお、税金は、iDeCo(個人型確定拠出年金)や医療費控除、住宅ローン控除の有無によっても変わり、課税所得が増えるほど、税率も高くなり、手取り収入割合が小さくなります。例えば、給料から天引きで納める社会保険料以外の控除が全くない、給与年収700万円の手取り収入は、年収の約75%になります。

 手取り収入は、実際に自分が使えるお金です。つまり、手取り年収の中で、食費や水道光熱費、通信費、交通費、住居費、教育費、保険料、貯蓄……とすべてのお金を賄う必要があるため、貯蓄計画を立てるときには、手取り収入をきちんと把握することは欠かせません。

手取りをしっかり把握できれば、確実な貯蓄計画を立てられる (C) PIXTA
手取りをしっかり把握できれば、確実な貯蓄計画を立てられる (C) PIXTA

 2018年は、自分の手取り収入を正しく把握して、無理なく、そして、確実に貯まる貯蓄計画をスタートさせましょう!

文/前野彩 写真/PIXTA