海外には一生行かないだろうと思っていた

 一生懸命やるのが怖くなって、本当は数学が得意なのに文系に進むなど、本気で頑張ることから逃げ続けました。就職先にホテルを選んだのも、ホテルでアルバイトをしていて「笑顔や接客がいいね」と言われることが多かったのが理由。自分のやりたいことよりも、求められるところに進んだ方がいいだろうという受け身な気持ちでした。

 海外にもまったく興味はなく、一生行かないだろうと思っていました。それが、ホテルに就職して料飲部に配属され、フレンチレストランの立ち上げでフランス人のシェフの方や海外のPRの方など、外国人と触れ合う機会ができて。英語が得意な人が彼らとうまくコミュニケーションしているのを見て、「こういうことも必要なんだな」と影響を受けました。25歳のときに仕事を辞めて短期の語学留学でアメリカへ。軽い気持ちで決めたことでしたが、そこで大きな価値観の変化が起こりました。

20代で留学した大澤さん。「海外志向はまったくなかった」そうです
20代で留学した大澤さん。「海外志向はまったくなかった」そうです

語学学校での出会いが変えてくれたもの

 入学したのは、さまざまな国から移民としてアメリカにやってきた人たちが通うような語学学校です。クラスメートは自分の感情をすごくストレートに出していて、その姿勢に衝撃を受けました。私は緊張したりすると顔が赤くなりやすいこともあって、それまで自分の感情をいつも抑えるようにして生きていたんです。人の気持ちにも敏感で、調子に乗っていると思われて嫌われたり怒られたりしたらどうしようと気にしてばかりでした。

 一番印象的だったのは、エルサルバドルから来たという男性です。たぶん事情があって家族と一緒に逃げてきたような形だったのですが、何の仕事をしているのか尋ねると、「パソコンを直している」と堂々と答える。生きていられること自体が幸せだ、という感じなんです。そんないろいろな境遇の人と出会ったことで、まずは楽しく、自分らしく生きることが大事なんだ、私ももっと感情を出して人と向き合っていこうと思えるようになりました。