辞職するつもりで本音を吐き出したら…

 当時はそんな自分に気づいていませんでした。会社の制度や、周りの雰囲気が自分を苦しくさせている、と他責にしていたんです。上司との面談でも、「会社や部署、チームにこんな問題があるのではないか」と、不満をこぼしました。すると、「みんなに話してみたら?」と言われて。大勢の前で何かを話したことなんてありませんでしたが、そのときはすっかり辞めるつもりだったので、最後に本音を吐き出してもいいか…と、部署のみんなに声をかけました。

 私一人がわーっと話して終わりなんだろうな、と思っていたんですが、その場が予想外に盛り上がったので驚きました。普段あまり発言しない人が意見をしたり、泣き出すメンバーがいたり、マネージャーが真剣にメモを取っていたり。そして、翌日から部署の雰囲気ががらっと変わったんです。「組織が変わる」とはこういうことなのか、と実感しました。

 それまでの私は、自分個人の成長にしか興味がありませんでした。個人の実績が積み上がって、結果的に組織が良くなればいい、くらいにしか考えたことがなかった。でも、あのエネルギーに満ちた場と、そこから生まれた結果を目の当たりにして、心の底からすごいと思いました。人と人が意見を交わし、影響を与え合い、一体感が生まれるとこんなにも大きな力になるのか、と。

初めて本音で議論し、自分の発言が組織に与える影響を感じることができたそう
初めて本音で議論し、自分の発言が組織に与える影響を感じることができたそう

「面倒見たがり」な幼少期の思い出が教えてくれたこと

 ちょうどその後、お正月休みに入りました。エン・ジャパンで働き続けるのかどうかも含め、自分にはどういう仕事が向いているのか、休み中にじっくり考えることにしました。性格を分析してみようと母と小さいころの話をしていると、自分が「面倒見たがり」だったことを思い出しました。弟に食事をつくったり、周りのみんなに構ったりしていたんですね。

 これまでの仕事の経験も振り返ってみて、自分の成果を突き詰めるのもいいけれど、私は「誰かのため」に力を発揮できるのでは、と思い至りました。そこで改めて「リーダーになりたい」と思ったんです。