若者の就職支援を行うベンチャー企業「UZUZ(ウズウズ)」で働く草野有砂さんは、父親の急死を機に会社を辞めて茨城県の実家に戻ることを考え始めました。そんな彼女に会社が提示したのは、「リモートワーク」という働き方。「1人オフィス」の環境で芽生えた仕事への取り組み方の変化や今後の目標について伺いました。


「在宅で働いてみない?」

 父が交通事故で急死し、一人きりになってしまった母のことを思って、私は会社を辞めて茨城の実家に帰ることを決めました。でも一方で、この会社が好きで辞めたくないという気持ちもあった。考えがまとまらないまま上司に相談すると、「じゃあ俺がいったん代表、副代表と話してみるから」と言ってくれました。そのとき私は、正社員ではなくアルバイトのような形で、何かできることをする感じになるのかなと思っていたんです。

 会社から返ってきたのは、「在宅で働いてみない?」という思いがけない提案でした。「会社としてもこれからの新しい働き方をつくっていかなければと考えていたし、何よりやめてほしくない」と。常日頃、うちの会社は「社員がどうすれば働きやすいか」ということを考えているなとは感じていましたが、ああ、ここまで考えてくれているんだ、私の直感は間違っていなかったんだなとすごく思いました。

UZUZ ディレクター 草野有砂さん。東京・西新宿のオフィスにて
UZUZ ディレクター 草野有砂さん。東京・西新宿のオフィスにて

会社初の「在宅社員」として働く

 今年の2月から、実家の私の部屋を仕事場にしたリモートワークが始まりました。会社としても初の試みなので、まずは様々な部署で手が足りていないものや、遠隔でもできることをいろいろと手伝うような形でスタートしました。カスタマーサポート部門で求職者の対応をしたり、新しいシステム導入の際の入力作業を一気にやったりといったことです。

 勤務時間はオフィスと同じで午前9時から午後6時です。忙しいときは夜の8時過ぎくらいまで仕事をすることもあります。自宅というプライベートな空間で、「会社に出勤して仕事をする」ときと同じような気持ちの切り替えが果たしてできるのかなと思っていましたが、不思議とすんなりいきました。

 一日の流れを簡単にいうと、朝起きてご飯を食べ、着替えて仕事の準備をして、8時半前にはパソコンの前に座ります。メールやチャットワークのチェックをした後、9時からオフィスで始まる朝礼に合わせてテレビ会議のスイッチを入れ、「おはようございます」と呼びかけます。東京のオフィスでは、上司のすぐそばに私のパソコンと接続されたパソコンが置いてあって、勤務中は常にお互いの様子がモニターで見えている状態です。用事があるときはモニターを通じて相手に呼びかければすぐに返事が返ってくるので、拍子抜けするくらい、オフィスに出社しているときと変わらないですね。

 ただ、旅行に行った人が社内でおみやげを配ったり、誕生日にケーキを買ってみんなでお祝いしたりするとき、モニター越しに「おいしいよー」って私に見せびらかしながら食べたりするんです。ひどいですよね(笑)。

勤務時間中は東京オフィスと草野さんの自宅がネットワークでつながれ、パソコンの画面を通じてお互いの姿が見える
勤務時間中は東京オフィスと草野さんの自宅がネットワークでつながれ、パソコンの画面を通じてお互いの姿が見える
草野さんの自宅のデスク。毎日このデスクに“出社”している
草野さんの自宅のデスク。毎日このデスクに“出社”している