マギーズはまさに自分が欲しかった居場所

 イギリスのマギーズセンターは、47歳でがんを発症した造園家のマギー・K・ジェンクスという女性が、がん患者とその家族らの居場所となる空間を作りたいと1996年に設立したものです。単なるがん患者同士の交流の場ではなくて、「がんに影響を受けた全ての人」が、人生に打ち砕かれそうになったときに自分の力で歩んでいけるよう、医療以外の社会的・心理的なサポートをする場所なんです。

 サポートといっても薬やカウンセリングを強要することはなくて、相談したいことがあれば思う存分話してもらう。話したくないときは、本を読んだりお茶を飲みに来てもらうだけもいい。知れば知るほど、一番苦しかったときに私が欲しかったものは、まさにこんな居場所だったと確信しました

東京・豊洲に建設中の「マギーズ東京」にて
東京・豊洲に建設中の「マギーズ東京」にて

クラウドファンディングで2200万円を調達

 絶対にマギーズを日本に作りたい。課題はいろいろありましたが、一番の問題は土地と資金でした。不動産会社に勤めている友人の支援もあって、土地については豊洲に借りられることがすぐに決まりました。次にクリアしなければならなかったのは資金です。その土地を確保するためにも、2014年中に最低で700万円を集めなければなりませんでした。

 そこで、2014年の9月からクラウドファンディングに挑戦したんです。高額なので果たして集まるのか不安だったのですが、スタートから約2週間後、なんと私の誕生日に無事達成することができました。最終的には2000万円以上のご支援をいただいて、仲間たちもただただ驚くばかりでした。

 この資金を集めるために、記者の仕事の合間を縫って「この人に応援してもらえたらいいな」という方一人一人にメールを送ったり、毎日何かネタを作ってホームページを更新したり、地道な努力を重ねました。私は記者なので、普段は取材をする側。この頃、初めて取材される側を経験しました。

 こうして「マギーズ東京」の設立がいよいよ現実味を帯びてきました。そこで会社にプロジェクトの活動申請をしようとしたのですが、人事部から「副業禁止の規定があるから、おそらく認められないだろう」と言われてしまったんです。

<次週に続く>

文/金澤英恵 写真/品田裕美

鈴木美穂(すずき・みほ)

日本テレビ報道局・社会部記者(厚生労働省担当)。NPO法人マギーズ東京共同代表理事。24歳で乳がんを経験。復帰後、社外活動として若年性がん患者を応援する団体「STAND UP!!」、がん闘病中でも参加できるワークショップを運営する「Cue!」を立ち上げる。2014年にイギリスのマギーズセンターと出会ったことをきっかけに「マギーズ東京プロジェクト」をスタート。2016年10月、東京・豊洲にマギーズ東京オープン。
マギーズ東京プロジェクト:http://maggiestokyo.org/

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