海外ではがん経験者に「おめでとう!」と言う

 そんな中、「がんを経験したこと」に対する考え方が変わった出来事がありました。2013年に欧州で開催された、がん患者を支援する人たちが集まる国際交流会議に参加したときのことです。20代のジャーナリストという存在は珍しかったようで、「あなたはなぜここにいるの?」と、皆から質問されました。そこで、乳がんを経験したサバイバーであることを話したら、「そうなのね、おめでとう!」と言ってハグされたんです。

 海外ではがんを経験をした人に対して敬意と祝福の気持ちを込め、「Congratulations!」と言う文化があるんですね。最初はとても驚きました。日本でこんな風に言われることはまずないし、そもそもがんになったことを公言できないと話したら、「じゃあ、まずはあなたが堂々と言わないとね! 皆が言わないと社会は変わらないのよ」と言われ、胸に刺さりました。

報道局記者として、「いつでも取材できるように、常に持ち歩いています」というデジタルビデオカメラ。
報道局記者として、「いつでも取材できるように、常に持ち歩いています」というデジタルビデオカメラ。

一軒家を買う決心をするも…

 そのことをきっかけにいろいろなアイデアが湧いてきて、趣味や習い事のような場所でがん患者同士が出会ってもいいんじゃないかと思い、その年の5月にがん患者やがん経験者のためのヨガ、料理、書道などのワークショップをスタートしました。

 私ががんになった当時、普通のヨガのクラスに行ってカツラを落としてしまい、気まずくなって行けなくなってしまったことがあって…。カツラを脱いでもいい、どんな姿でも参加できる、できないポーズはやらなくていい。そんな、がんのことを分かってくれる人がいて、安心して楽しめる”居場所”があったらいいなと思っていたんです。

 ワークショップは好評だったのですが、平日は記者をしているので開催できる日数は限られていました。これはもう一軒家を買ってワークショップを開催するスタジオを開こう! 私もそこに家族と住もう! と一大決心して物件を探し始めました。

 2014年に2度目となる国際交流会議に参加したのは、ちょうどそんな時期でした。昨年交流した方に再会して、スタジオ兼住居の家を買おうと思っていることを伝えると、「自分の家族だけで完結させちゃだめよ」と言われたんです。「マギーズセンターのようなモデルでやるべきだ」という声もあって、そこで初めて「マギーズセンター」という存在を教えてもらったんですね。