聞き役に徹することが信頼につながる

 いい話であれ悪い話であれ、まずはひたすら聞き役に徹して、仕事での困り事から家族のこと、どういう日常を送っているかということまで何でも聞く。そうすると、その人がどのようにコミュニケーションを取ってほしくて、何に価値を置いているかが見えてきます。そうして得たさまざまな情報を持ち帰り、事業づくりに生かすことを繰り返しました。

 人って不思議なもので、自分のことを一通り話すとこちらに信頼感を持ってくれるんです。「で、君が言いたいことって何だったの?」と、話し終わると聞いてくれる。「今のお話だと、うちのサービスのこことここが御社にとってメリットだと思います」とシンプルに説明するだけで、「じゃあやるよ」と契約に至ったケースは少なくありません。

 私のサービス説明は網羅性がないと他の営業メンバーからよく怒られるんですが、ありとあらゆることを聞いた上で、その人にフィットする部分だけをピンポイントで見せるのが私のスタイル。最初は門前払い同然だった人に、試行錯誤の末に話を聞いてもらえると達成感がありますね。

直感や勢いより、筋道立てて考えるタイプ。スタートアップの「社員第一号」という道も、リスクや将来を考えた上での判断だったそう
直感や勢いより、筋道立てて考えるタイプ。スタートアップの「社員第一号」という道も、リスクや将来を考えた上での判断だったそう

両親への反発から始まった就職活動

 就職活動を始めた当初は「エリートサラリーマンになってやる!」と思っていました。私の両親はそれぞれ事業を起こしていて、「会社員は人に使われる立場でリーダーシップがない。お前も起業しろ」とずっと言われ続けていたんです。そんな「決めつけ」の先入観に反発して真逆の道に進もうと、「給料が高くて、ブランド力があって、海外駐在ができる」という3つの条件を決めて会社選びをしました。

 条件にぴったり合う大手の外資系IT企業から無事内定をもらえると、時間に余裕ができたので両親の言う世界も一度は見てみようと思い、ベンチャーでインターンをすることにしました。そのとき上司だったのが、後にシェルフィーの代表となる呂(ロイ)でした。

 ベンチャーでの仕事は、いざやってみたらすごく面白いものでした。インターンであっても、権限も責任も社員と同じレベルで与えてもらえて、成果さえ出せば自分ですべて決められる。やっぱり親の血には逆らえなかったみたいで、社長の近くで仕事をさせてもらえたこともあり、「エリートサラリーマンになりたい」という思いはすぐに消えてしまいました。