死ぬまでやってもいいと思える仕事を見つけた

 構想から6年、原稿が思ったように書けなかったり、協力をお願いした編集者さんに自分の考えをうまく伝えられず怒らせてしまったりとつらいときもありました。でも、幸せを感じる度合いは会社員時代とは比べられません。

 「有名になりたい」とか「評価されたい」みたいな他者ありきではなく、私は「わたし」が死ぬまでやってもいいと思える仕事がずっと欲しかったんだと気付きました。自分が生まれてきた不思議みたいなものと、自分と他者をどう調和的にとらえていくかということ。それが私にとっての大事なテーマです。

家にいる時間が長いので、仕事部屋には花を欠かさない。新逗子駅の近くにあるお気に入りの花屋でいつも買っているという。「お花をすごく愛している感じが伝わってきて好きなんです」(三根さん)
家にいる時間が長いので、仕事部屋には花を欠かさない。新逗子駅の近くにあるお気に入りの花屋でいつも買っているという。「お花をすごく愛している感じが伝わってきて好きなんです」(三根さん)

 創刊号に出てもらった禅の僧侶が「人間にできるのは、今自分がしゃべろうとしている言葉や行いが、つながりを回復するのか分断を深めるのか、常に考えてやることだけだ」ということを言っていて、私がやっていきたいのもそれだなと思いました。

 「たたみかた」を読むことで、周りとのつながりを回復する方向に動ける人がたった一人でもいればいいなと思っています。

聞き手・文/谷口絵美 写真/品田裕美

三根かよこ(みね・かよこ)

合同会社アタシ社 ディレクター・デザイナー。千葉県出身。カナダで7年間を過ごす。リクルートメディアコミュニケーションズ在職中に桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科を卒業し、2015年4月に夫で編集者のミネシンゴさんと合同会社アタシ社を設立。現在は30代のための社会文芸誌「たたみかた」の編集長、美容文藝誌「髪とアタシ」や書籍のデザインを手がけつつ、企業の外部編集者としても活動する

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