知識ゼロから衛星開発プロジェクトへ

 JAXAに入社して最初に担当したのは、既に打ち上げられていた超高速インターネット衛星の利用推進でした。衛星の使い道をどのように社会に広げていくか、外部機関と一緒に実験していく仕事です。衛星開発そのものに関わるのは、「あらせ」が初めてでした。

 最初のうちは衛星開発に関するイメージも全く湧かず、調整役といわれても何をどうしたらいいか分かりませんでした。衛星開発の知識はゼロからのスタートだったんです。プロジェクトのメンバーは各分野のプロといった技術職の人や、年上の人も多くて、すごいなあと尊敬すると同時に「それに引き換え、私は何もできないな」なんて感じていました。

小川さんが着ているのは、プロジェクトのオリジナルジャンパー。開発チームで一体感を持つために、オリジナルグッズをよく作るそう
小川さんが着ているのは、プロジェクトのオリジナルジャンパー。開発チームで一体感を持つために、オリジナルグッズをよく作るそう

できることを続けていれば、知識がつながるときがくる

 何も分からなかったので、まずは打ち合わせや会議などでひたすらメモを取り、議事録をまとめることから始めました。

 当時、私は20代後半だったのですが、そんな初心者がプロジェクトに参加する場合、普通なら心配して上司や先輩の補佐としてつけることが多いと思うんです。ところが、私の上司は「分からないかもしれないけど、成長するためにやってみなよ」と任せてくれました。本当にいきなり、現場にぽんっと入れてもらった感じで。

 おかげで、周囲の人に教わりながら現場経験を積ませてもらいました。そのうち現場で見聞きした知識がつながる瞬間があって、1~2年たった頃には、会議で自分の意見を言ったり、提案したりできるようになりました。若手だからといって発言しづらい雰囲気がなかったのも幸いでした。