ANAエアポートサービスの山下寛子さんは、羽田空港で飛行機の地上支援業務に携わって12年。到着機の誘導に始まり、再び出発を見送るまでの限られた時間の中、安全最優先で作業にあたっています。1機1機を無事に送り出す責任者としての自覚や、今も心の支えとなっている忘れられない出来事を語ってくれました。


夢がある仕事だと次の世代に伝えたい

 入社して数年たった頃、出発する機体からボーディングブリッジを外しているときに、ふと見ると機内の窓から小さな男の子が手を振ってくれていたことがありました。私が手を振り返すと、今度は投げキッスを一生懸命してくれて。すごく心が温かくなりましたね。私も投げキッスを返したかったのですが、彼には私しか見えていないけれど、私の姿はたくさんのお客様に見られているのでなかなか返せず(笑)。一瞬の出来事でしたが、お客様との触れ合いは本当にうれしいです。

ANAエアポートサービス ランプサービス部 山下寛子さん
ANAエアポートサービス ランプサービス部 山下寛子さん

 小さなお子さんから年配の方まで、さまざまなお客様の思いを乗せた航空機に携わるこの仕事には、やっぱり夢がある。かつて私が憧れたように、次の世代の人たちに将来めざそうと思ってもらえるよう、少しでも格好いい姿を見せられればと思っています。

分単位のスピーディーな作業が求められる現場

 ハンドラーの1日は、体操から始まります。作業で何気なく手にする鉄の棒が20キロぐらいあったり、高所作業で不安定な体勢をとったりすることもあるので、準備運動は大切です。その後、朝礼で周知事項や機体の様子などについての情報を共有したら、装備を整えてみんな一斉に現場に出ていきます。

 1回の勤務で担当する航空機は、10便前後。出発を見送って、作業完了を報告した時点で次に担当する便がファイナルアプローチ(着陸態勢)に入っているような感じです。ときにはもう着陸してしまっていて、急いで車で向かうこともあります。

黄色のベストは責任者の証です
黄色のベストは責任者の証です

 クルーの責任者は、1機の航空機に対してすべての責任を負う立場です。約束している時間に出発できなかった場合は行動を分単位で振り返り、原因を割り出さなくてはいけません。私は2013年に責任者になりましたが、自分の作業をしながらも他の人の様子を見るなど、少しでも広く視野を持つよう意識しています。