住宅にはローン以外にも費用がかかる

 頭金とは別に、もう一つ貯蓄で準備しておきたいのが、諸費用です。

 住宅を買うときには、登録免許税や不動産取得税、ローンの手数料や保証料、団体信用生命保険料、火災保険などの諸費用がかかります。このうち団体信用生命保険は、ローンの返済中に万が一死亡してしまった際に、保険金から残債が一括返済されるもので、住宅ローンの種類によっては、保険料が金利に込みになっていることもあります。

 一方、その他の費用は、購入のタイミングに一括で支払うものが多いです。これらを合わせて、おおよそ物件価格の3~10%程度見込んでおきましょう。3000万円の物件なら、90~300万円に当たります。

 つまり、仮に3000万円の物件を買うと考えたとき、単純に3000万円を住宅ローンで借りるとすれば月に約8万円や9万円さえ返済すればよいと思うかもしれませんが、実際には諸費用としてまとまったお金が手元になければ買えません。

 また頭金を含めて考えると、買う前には400~900万円ほどの貯蓄は用意しておきたいものです。さらにいえば、貯蓄のすべてを住宅に充ててしまっては、買った後の暮らしでお金が必要になったときに対応できませんから、別途の貯蓄も残しておきたいところです。

「家賃=住宅ローン」で考えるのはNG

 もう一つ忘れてはならないのが、購入後にかかる費用です。

 家を買った後にも、賃貸のときにはかからなかった費用が定期的にかかります。固定資産税、地域によっては都市計画税、火災保険料、設備や内装の修繕費などです。マンションに住む場合には、修繕積立金と管理費もかかります。これらは広さや築年数などの条件によって異なりますので、実際に購入するときに確認しましょう。

 いずれにしても、住宅を買ったら、住宅ローンさえ払えればよいわけではありません。ですから、今の家賃をベースに住宅ローンの返済額を考えるときにも、「家賃=住宅ローン」ではなく、「家賃=住宅ローン+費用」で水準を決めましょう。

ライフスタイルが変わってもその家に住める?

 このように、住宅を買うときには賃貸住まいのときにはなかったさまざまなお金を考慮しておく必要があります。これに加えて、シングルのうちに住宅を買う場合には、その先のライフプランと住宅とのバランスも考慮しておくことが大切です。

 一人で住むには便利な家であっても、結婚したらパートナーと一緒に住めるか? 子どもが生まれたら家族で暮らせるか? といったら、そうとは限りません。ライフスタイルが変わったら、住まいに求めることや価値観がさま変わりすることもあります。

 せっかく買った家がムダにならないように、将来の暮らしも十分にイメージして、そのときに家をどうするか? も考えてから買うのでも、まだまだ遅くないはずです

文/加藤梨里 イラスト/とげとげ。