「私はどこで、誰と、どんな風に働いていたいんだろう? どんなふうに生きていきたいんだろう?」―自分のことは一番分かっているはずなのに、意外と答えは出てこないものです。「やりたかった仕事」だったけれど、忙し過ぎる職場で、目の前の仕事をこなしていくだけで精一杯の日々。深夜タクシーで帰宅し、始発で出勤、土日も休むことなく働き続けた結果、体調も崩すようになってしまったアラサー女性が、2度の転職を通して自分と向き合い、自由な社風で知られるITベンチャー企業でのびのび働く毎日を手に入れるまでの転職ストーリーをお届けします(後編)。

■前編「『お前はこのままだと10年後も同じ』彼の一言で転職」

転職で健康な日々を取り戻す

 希望がかなって、健康用品などを扱うメーカーの商品プロモーションの仕事に就いた明美さん。店頭キャンペーンを考えるという仕事も面白く、前職で培った企画力や提案力を発揮し、すぐに仕事ができるようになった。また、忙しくないときは、定時退社もでき、土日もきちんと休めるようになったことで、健康も取り戻した。「行きたかったスノボにも行けましたし、友人の結婚式にも行けるようになりました」

転職して何よりよかったと感じたのは…(C)PIXTA
転職して何よりよかったと感じたのは…(C)PIXTA

 転職してなによりよかったと感じたのは、父親が病気で入院していたときのことだったという。「父は、8カ月の闘病の末、亡くなりましたが、土日がきちんと休めるので、毎週末、実家に帰ってお見舞いに行くことができ、悔いなく送ることができました。葬儀のときは、1週間、お休みをもらえてありがたかったです」

 さまざまな制度も整った、居心地のいい会社ではあったが、仕事にスピード感がなく、旧態依然とした業界の体質に物足りなさを感じることも多かった。「ちょっとした企画提案でも、いちいち稟議(りんぎ)を通さなければならず、予算をもらって動き出すまでに1か月はかかってしまいます。このままここにいても成長できないな……と思うようになりました」

 転職活動を始めたのは、転職して4年目に入った頃だった。新規事業を行う部署に異動となったのだが、会社の事情で部署の方向性が曖昧なままスタートしたこともあり、ほとんど仕事がない日々が続いたのだ。「父の死を経て、一度きりの私の人生、これでいいのかな? と考えることが多くなったのも、きっかけの一つです」